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05:学園パロディ

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〈私立セレナード学園〉

ニコ・ピアノリア

・grade:2年生

・club:写真部

理事長、ユラン・ピアノリアの息子。

反抗し、家出してルーシャの家に居候していた。しかし、関係改善に伴い、家に戻った。


ルーシャ

・grade:2年生

・club:なし

宿屋の娘。

ニコとは仲が良く、よく一緒にいる。宿屋の手伝いの為、部活には入っていない。


桃嶋・ジュラ

・grade:3年生

・club:写真部

ニコとアステリの幼馴染。

ニコとジュラの両親が知り合いの為、ニコの護衛として一緒にいて欲しいと言われている。


アステリ・フレメイル

・grade:3年生

・club:写真部

ニコとジュラの幼馴染。

ジュラ同様、ニコとアステリの両親が知り合い。


リュエル・ピアノリア

・grade:1年生

・club:手芸部

ニコの妹。

中等部までは男として生活していた。高等部に上がってからは女子として生活している。


 時は10月31日。世にいう、ハロウィンである。

 ここ、私立セレナード学園もそのイベントの色が見えている。校内はオレンジや紫、黒などの装飾が多く施されており、学園全体もお祭り騒ぎである。中には仮装をしてやってくる生徒もおり、一層華やかだ。


 私立セレナード学園。

 理事長ユラン・ピアノリアが設立した学校である。イベントごとには乗りの良い学園であり、制服、内装も綺麗なため人気のある学園だ。私立であるにもかかわらず、だいたいの生徒がこの学園に通っている。


「おはようございます、皆さん。今日はハロウィンなのではしゃいでいる方が多くいますが、授業は通常通りです。格好はどうあれ、授業はきちんと受けるように」


 笑顔でクラスにそう語りかける2年A組担任の桃嶋・シン、担当は社会。彼は笑顔だが、クラスの生徒たちは知っている、その笑顔は決して優しいものではない事を。

 その証拠に、彼のクラスはほかのクラスとは違い、今朝のホームルームが静かである。


 そして、閉じられる扉を誰もが息をのんで見ていた。

 扉が閉まる瞬間、クラスメイト達は息をふーっと吐いた。緊張感が一気に取り払われた。


「シン先生は相変わらず牽制が上手いよね」

「誰もシンがフランケンシュタインの仮装している事にツッコめなかったけどな」

「ニコが言ってあげればよかったのに」

「ルーシャは分かってないな……。シンにそんなこと言って、クラスの奴らの心臓を止めたくない。去年ハロウィンで羽目を外した先輩がどうなったか知っているのか?」


 ニコは疑問符が浮かんでいる隣のルーシャを見ながら呆れた。

 ニコはそんなルーシャを見ながら去年の惨状を思い出す。去年のハロウィンで羽目を外して、授業毎に「トリックオアトリート」と叫び、お菓子をくれない教師の授業を滅茶苦茶にしたという人たちがいた。


 シンもまた、お菓子を持っておらず、授業にならない……筈だった。


 しかし、シンは生徒指導担当である。彼にとってそんな事を鎮めるのは簡単な事だった。彼の授業を境にその先輩方はその日の授業をきちんと受けたそうだ。

 一体、シンが何を言い、何をしてそれを鎮めたのかは誰も分からない。当時のそのクラスの人間は誰1人としてその事を口にはしなかった。そして、そのまま卒業していった。


 これはセレナード学園に受け継がれていくであろう事である。


「まあいいけど、次、化学だぞ。……行くぞ」

「待って、ニコっ」


 ニコはルーシャの腕を掴みながらスタスタと廊下に出ていった。ルーシャはほぼ引きずられるようにして教室を出ていったのだった。



 ハロウィンが始まる。




○学園めもわ!-ハロウィン編-



「ト――」


 ドスッ


「ちょ、アステリ!? そりゃないでしょ。まだ、『ト』しか言ってないじゃん!」

「悪いものは早期対策が一番いいでしょ?」

「そうだね……って、ボクは悪いもの!?」


 昼休み、ジュラはアステリが1人になるのを見計らって近づいてきた。

 会って早々、ジュラは腹に一発くらっていたが。


「幼馴染にくらいお菓子くれたっていいじゃんかよー」

「ジュラはうるさいし、しつこし、うるさいのよ」

「……2回も言うって、ジュラ悲しいっ」


 人が少ないと言えど、廊下にはそれなりに人がいる状況で、ジュラは泣きまねをし始めたので、アステリは盛大なため息を吐く。

 アステリとジュラは幼馴染でこういったことは何度もあるのだが、慣れないものである。アステリはいつも扱いに困る。


「……じゃあ、私から」

「ん?」

「Trick or treat?」

「発音、良すぎだから!」


 だが内心、ジュラはニヤッとした。

 もし自分がトリックオアトリートとちゃんと言えた場合はそれでよし、逆に言えなかった場合はアステリに言わせれば上出来とジュラは思っていたのだ。ジュラの幼馴染であるアステリの事であるから、自分の為にそう言ってくれると彼は信じていた。


「ボク、お菓子持ってないんだよねぇ」

「悪戯されるの分かってたの?」

「アステリに悪戯されちゃうのもいいかな、って思うからかな?」


 悪戯っぽく笑いながら、アステリの顔を覗き込むとアステリは驚いたように目を丸くした。そして、慌ててジュラと距離をとる。

 彼女の心臓はバクバクして収まらなかった。それを相手に知られまいと呼吸を落ち着けるのが大変だった。それは、ジュラ(あいて)にバレてしまっていたけれど。


「ほら? どんな悪戯、してくれるのかな?」

「……」


 アステリは自分が遊ばれていることに気が付いていた。それがどうしようもなく腹立たしい。ジュラという事がもっと腹立たしい。

 両手を強く握りしめ、冷たい瞳をジュラに向ける。


「そうね、今日のこれからの授業の教科書が全部なくなって、今から始まるシン先生の歴史の授業でジュラだけが当たるように言ってあげる。あとは、今日の部活はずっと立ちっぱなし。そうそう、秋の展覧会に向けた資料作成も頼もうかしら。あとは、今日最後の授業の体育を半袖短パンで受けさせてあげる。それから――」

「ま、ま、まって! 酷くない!?」

「ジュラの思うようにはいかないから」


 そう言い放つアステリは先ほどうろたえていた姿とは違い、堂々としていた。すっかり立ち直ってしまい、形勢逆転を許したジュラはため息を吐きながら、ポケットに忍ばせていたかぼちゃのクッキーをアステリに渡した。


「持っているじゃない。ありがと。今日のおやつにするから」

「持っていますよ。じゃあ、今度はボ――」


 その時、昼休みの終わりを告げる鐘が鳴った。


「またね」


 アステリは硬直しているジュラに手を振りながら1人教室に入っていった。

 廊下にぽつんとジュラだけが残された。


「ジュラ、悲しい」

「へぇ、悲しいからって兄の授業をサボる気か?」


 ジュラの背後に冷たい空気が迫った。

 恐る恐る振り向いたジュラの目の前に、フランケンシュタインが立ちふさがっていた。




 写真部、部室。


「兄さん、怖かったわー」

「ジュラはまたやらかしたのか」

「まあ、存在自体がそういうものですけどね」

「ニコもアステリさんも、知らない方がいい事実もあるんですよ」


 夕日が差し込む、彼ら写真部の部室。

 ジュラはあの後、お菓子をアステリにあげたのにも関わらず、シンから質問攻撃を受けた。恐ろしいフランケンシュタインは笑顔だった。


「ルーシャちゃん、それ、傷口に岩塩ねじり込んでいるから。フォローじゃないから」


 ジュラの扱いが酷い事は昔からよくある事だが、それがその4人の連携と仲のよさでもある。

 ジュラは机に伏せると呻き声をあげていた。そんなジュラには構わずに3人で話が進む。


「ルーシャは手伝い、今日はないのね」

「はい。今日は写真を見せてもらうのと、お菓子を持ってきました」


 ルーシャは持ってきた包みを開けて柔らかく微笑んだ。

 包みの中には、かぼちゃのパウンドケーキ、かぼちゃプリン、スイートポテトなどなど秋の味覚を使用したお菓子がたっぷりと入っていた。


「おお」

「おいしそうね。折角だから紅茶淹れてくるよ」

「あっ! ボクも行くよー」


 今まで唸っていたはずのジュラはがばっと起き上がり、アステリの後にひょこひょこと付いて行った。


「相変わらず、料理が上手いな」

「宿屋の娘ですから」


 ニコが珍しく素直に褒めてきたので、ルーシャは照れ笑いながらそう言った。そんな彼女の様子を優しい表情で見ているとはニコは気が付かないだろう。ジュラに見られていたらからかわれるに違いなかった。


「ニコ。私はお菓子を用意したよ」

「え」

「トリックオアトリート?」


 これをいつ言おうかと1日考えていたルーシャは笑顔でそう言った。ルーシャは何となく、ニコにこの言葉を言ってみたかったのだ。お菓子をニコからもらいたいからか、それとも単純に今日という日を楽しみたかったのか、ルーシャにはよく分からないが。


 お菓子が出てくることを期待してルーシャの目は輝いていた。

 ニコはその目から目を逸らしながらゴソゴソと鞄の中をあさった。


「ほらよ」


 ルーシャの目の前に現れたのは、ハロウィン用に可愛らしくラッピングされたお菓子の小包だった。オレンジの大きなリボンとかぼちゃやお化けのイラストが可愛らしい。


「こ、これ……」


 その包みを受け取ってさらに目を輝かせるルーシャはその小包を大切に手の中にしまった。


「……別に、言われるの待ってたわけじゃないから」


 全くルーシャを見ないで言ったニコの顔は少し、熱を持っていた。






「そろそろ入っていいかなぁ」


 写真部の部室の前ではアステリとジュラがいた。ジュラは扉に耳をあてて、中の様子をうかがっていた。

 そんなジュラをアステリは呆れた顔で見ていた。距離も少し離れていた。


「ちゃーんとお菓子準備するあたり、ニコだよねぇ」

「……私も用意すればよかった」


 そろそろ、部室に入ろうかとアステリはドアノブに手をかけたが、その手はジュラの手によって抑えられてしまった。


「なっ」

「ねぇ、アステリ」


 ジュラはニコッと笑った。




「Trick or treat?」





イベント系が書きたかったので書けてよかったです。

最後、ジュラに全部もっていかれた気がしますけど(ーー;)

あと、ハロウィンってリア充のイベントでしたっけ?

おかしいな……。


もしかしたらこれからも学園パロディあるかもです。

それでは、次回もお会いしましょう。

2014/10 秋桜(あきざくら) (くう)

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