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04:過ぎ去りし事

 ボクは何でも知っているよ? なーんて、ね?




 アステリが居ないので、ボクは少しの間休憩をもらう。新国王となったニコは日々仕事に励んでいる。

 ボクも忙しくなったのは本当に残念だ。


「あー、やんなっちゃうね」

「おい」


 伸びをしていたボクを見てニコは鋭い視線を向けている。怖いったらありゃしない。そんな顔でいるとルーシャちゃんに嫌われちゃうぞ、ってボクは言おうと思ったけど、怖いので止めます。

 曖昧に笑って、誤魔化そうとしたが、扉の奥から気配がする。この感じは……。


「アステリだ……。仕事仕事!」


 ボクは休めていた手を動かし始める。

 それからすぐにアステリが書類を抱えて部屋にやってきた。


「ジュラは気配に鋭いな」

「……ニコ様、ジュラは仕事していましたか?」

「さぁ、な」


 じとっとした目でアステリとニコに見られて、ボクの背筋には冷たい汗が流れる。

「や、やだなぁ。仕事してたよ? ……すいません、すいません」

「気配に鋭いのは良いが、使い方がな……」

「まあ、ジュラですから」

「アステリ、それ、どういう意味!? ボクの気配の鋭さはボクの過去が関わって──」


 ボクが話を始めようとするが、アステリが目の前に新たな書類を積み上げて来た事と、その顔が怖くて何も言えなくなってしまった。蛇に睨まれた蛙の気持ちが今ならすごく分かるよ。

 まあ、ボクの過去何て聞いてもらおうとは思っていなかったけどね。そんなに良いことでもないし。



─これはボクがニコの側近になる前の話。



 ボクの家、桃嶋(ももじま)家は由緒正しき、上級貴族騎士という位を持っている。上級貴族でもあり、騎士でもある。

 まあ、そんな位は兄さんがやらかしたおかげでなくなっちゃうんだけれどね。


 貴族である前に騎士であるボクの家はボクを厳しく育てた。もちろん、立派な騎士として。そんなボクはニコの側近になる前、裏の方の仕事をしていた。

 騎士として、いろいろなところに配属される。それが裏だっただけだった。


「今回は東を治めている貴族を見てこい。何やら不穏な動きがある。見つけ次第報告、場合によってはその場で動け」

「はいはい」

「お前には期待しているのだからな」


 上司がボクを呆れた顔で見ている。

 ボクはなんだかんだいって、隠密能力が優れていたため、城や地方の騎士団では無く、ここに飛ばされた。

 仕事内容は裏でコソコソしている貴族たちの監視、または制裁。監視と注意で終わることが大半だけれど、たまに面倒くさいやつがいたりする。


 そういう面倒くさいのはよくボクに回ってくる。

 能力をかわれるって言うのもなかなか辛いものなのかもしれないと思った。

 だって、面倒な仕事ばっかりなんだもん。


 こんな部隊を設けている国王もどうかと思うけど、まあ、国を動かすためにはこういう事も仕方ないと言えばそうなのかな。

 実際、国に迷惑かけかけているやつらばっかりだしね。


 ボクは朝早くに出発して東へと向かった。

 夕方には目的地に到着した。


「ありゃりゃ、武器の密輸に反王政をけしかけてるとか……。めんどーだねぇ」


 目的の貴族の家に行くとあっさりと情報を掴んだ。

 その貴族は武器を密輸入して、反王政の人々に売り渡していたのだ。それで自分は金儲け、反王政の人々が王を倒すのならば今後好都合、ってところか。


 現王政の崩壊後のごたごたに乗じてしゃしゃり出ようってわけね。

 今の国王もだいふ酷いことやっているから、そう思うのは分からないでもないけれど、さすがに悪どい事考えるね。逆に拍手を送りたい。


 でも、そんな事残念ながら出来ないと思うんだ。国王はそのことにかんづいちゃったからね。それに、来たのはこのボクだしね☆


 さてと、報告しに行きますか。

「そこの兄ちゃん、何してるのかな?」

「げ」


 後は帰って報告し、騎士団が動いてくれるだけだって言うのに、ボクは運がないらしい。

 ボクの行く手を阻むのは、いかにも用心棒といった格好の男だった。

 この貴族、用心棒まで抱えていたなんて、本当に面倒くさい!


「ボクは通りかかっただけですよぉ」

「そんなやつが屋根の上にいるわけねぇだろうが」


 確かにね、ボクもそう思う。


「残念だなぁ兄ちゃん。ここで終わりだぜ」


 剣を抜いた男を見て、ため息が漏れた。

 どうやら動かざるを得ない状況になってしまったようだ。仕方がない、ジュラ頑張っちゃう。


 一気に間合いをつめ、一撃を食らわそうとする男。


 目の前で剣が空を斬る。


 なかなか良い動きをしている。


「避けるとはなかなかだな」


 ああ、やる気スイッチ押しちゃった……。


 先ほどよりも一段とスピードが増している気がする。

 いやー、ドジだなぁボクは。


 繰り出される攻撃に頭を抱える。

 避けるのも面倒くさいな……っと、次は右から。


 ナイフで受け止め、金属がぶつかる音が響く。


「くそっ」


 相手は攻撃を散々していたので、だいぶ息が上がっている。はしゃぐのは良くないと思うんだ。


「こっのっ……!」


 下。


 バク転でかわし、相手との距離をとる。


 ……あー、少ししたら応援が来ちゃうなぁ。


 まあ、仕方がない。


 ボクは手に持ったナイフを投げる。


 男はそれを綺麗に正面で払いのける。


「ふん、こんな攻げ──」

「へぇ」

「なっ……!」


 顔面にボクの拳がめり込み、男は屋根の上で倒れ、そのまま転がって落ちた。

 ありゃ、痛そう。


「正面で払うから、ボクが見えなくなっちゃうんだよ。ボクに負けないくらいドジだねぇ」


 あとは、下の方でがやがやしている皆さんをお静かにさせなければいけないですねぇ。

 ボーナスつくとジュラさん、嬉しいな。













「この間はご苦労だったな」

「ボーナスが出れば全然OKですよ?」

「じゃあ、ボーナスだ」


 上司の騎士から渡されたのは1枚の紙。


「ナニコレ」

「こちらとしては嬉しくはないが、まあ、仕方がない。頑張れよー」


──辞令

 隠密部隊、桃嶋・ジュラ殿


 この度、我が国の第1王子ニコ・ピアノリア様に執事兼護衛として付くことを命ずる。



「……は?」


 そこに上司の姿はなく、ボクはぽつんと1人取り残された。


「ちょ、部隊長! 説明please!!」






 あの当時はなんか、嫌だったけど、今はニコの側近の方が楽しいんだよね。


「あ、ニコ、今日はルーシャちゃんが来るからって、仕事回しすぎじゃない?」

「……悪い」


 一瞬素直に謝ったニコは次第に目を丸くした。


「ルーシャが来るって、何で知っている!?」

「さあ?」


 1つボクから言わせて欲しいことがあるんだ。




 ボクに隠し事はやめた方がいいよ?





今回は矢上 弓美さまからのリクエストです。

リクエストありがとうございます。


と、言うわけで、

ジュラの過去に迫ってみました。

ジュラは書いていて楽しい人です。いつもおちゃらけて、皆さんから愛されて(?)いますからね。


それでは、次回もお会いしましょう。

2014/10 秋桜(あきざくら) (くう)

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