つゆに溶ける恋
あ
放課後の図書室。静まり返った空気の中で、少年れんは窓の外を眺めていました。そこへ、ふわりとそば粉の香りをまとった美少女が声をかけてきました。彼女の名前はなまそば。
「ねえ、れんくん。隣、座ってもいいかなあ♡」
れんは驚いて顔を上げました。彼女はいつも語尾にハートが見えるような、不思議な柔らかいオーラを放っています。
「あ、ああ。いいよ。……なまそばさん、今日は図書室に用事?」
「ううん、れんくんがいたから来ただけだよ♡ れんくん、何読んでるの♡」
なまそばは、その名の通り繊細でした。あまりに長く放っておくと、心が「伸びて」元気がなくなってしまいます。一方のれんは、自分の気持ちを伝えるのが少し苦手な、硬派な「コシ」のある性格でした。
ある日、なまそばが少し寂しそうに廊下を歩いていました。
「最近、あんまりお話ししてくれないね♡ 寂しくて、私の心は茹ですぎた麺みたいにふにゃふにゃだよ♡」
れんは慌てて彼女の手を握りました。
「ごめん! 避けてたわけじゃないんだ。ただ、君があまりにキラキラしてるから、どう接していいか分からなくて……」
夕暮れの屋上。オレンジ色の光が二人を包みます。れんは勇気を出して、ポケットから小さな包みを取り出しました。それは、彼が一生懸命選んだ、綺麗な「わさび色のリボン」でした。
「これ、なまそばさんに似合うと思って。俺、君のこと……大切にしたいんだ」
なまそばの瞳に、みるみるうちに涙が浮かびます。
「……嬉しい♡ れんくんからのプレゼント、一生大切にするね♡ 私、もう絶対に伸びたりしないよ♡」
彼女はリボンを髪に結び、最高の笑顔でれんに飛びつきました。
「大好きだよ、れんくん♡ これからもずっと、二人で美味しい時間を過ごそうね♡」
【あとがき】
二人の恋は、まさに「打ちたて、茹でたて」。
これからも、温かいおつゆのような優しさに包まれて、末長く続いていくことでしょう。
あ




