天使様は天使だった
「だから言いましたよね、荷物は私が受け取るからでなくていいと」
「で、でもセシルが料理で大変そうだったので、受け取ったほうがいいかなぁって」
「気持ちは嬉しいですけれど、でも正体がバレてしまいましたよね?」
「次は気をつけます……」
だから次などないんだ、という言葉を飲み込み、ニヤニヤと会話を聞いているリリーに視線を向ける。
「リリーさんお願いですからこのことは口外しないでください」
「えーどうしよっかなー」
だから嫌だったんだと頭を抱えた。
リリーさんとは幼い頃からの仲で、お互いに気兼ねなく話せる相手である。だからだろうかリリーは出会ったら必ずというほどちょっかいをかけてくるのだ。
彼女はいないのか、結婚の予定はないのかなど恋愛に関することばかりで鬱陶しくなる。リリーと絡みそういうことしか聞いてこなかったもう一人の幼馴染は今は事情があっていないけれど、リリー一人だけでも面倒くさい。
「はあ、わかった。条件は?」
「条件はぁ…」
リリーはちらりとノエルを見た。
「私の店に天使様の服を買いに来ること!」
「はあ?ノエル様は天使だから正体を隠してるんだ。だから街に出るなんてリスクが大きすぎる。しかも服屋なんて」
「まあそのへんは大丈夫!自分の店なんだしノエル様が来る日だけお休みにして貸切するから」
だからお願いと手を合わせてくる幼馴染を横目にノエルに質問する。
「だ、そうなんですが。行きますか?」
ノエルが嫌だといえば無理やり口を閉じるしかない。なんて少し物騒なことを考えていると、ノエルが返事をする。
「セシルがいやじゃなければ、服見てみたいです」
ノエルがそういうなら別にいいだろう。
「では行きますので日にちは」
「じゃあこの日とかどう?」
「わかりました。それではお帰りください。誰にもノエル様のことを話さないこと。いいですね?」
「あ、あはは。わかってる、わかってますよ。じゃあねノエル様!」
リリーは荷物だけ置いていくとそそくさとその場を去った。
まるで嵐のようだったとセシルはガクリとうなだれた。




