初めてのお祈り
「みなさん、おはようございます」
セシルが一言言うたけで、教会内は静まり厳かな雰囲気になる。ノエルはその様子を見て、さらにセシルのことを尊敬する。
セシルは、自分のことを助けてくれて、ベットに運んでくれて、朝ごはんもくれて。記憶を取り戻すまでここにいていいと言ってくれた。それだけでもセシルはいい人なんだなとわかる。
今朝、街の人たちとの挨拶の様子を見ていても街の人たちがセシルのことを好意的に捉えていることがわかった。本当に、なんてできた人なんだろう。こういう人にこそ祝福を与えるべきだ。
「それでは、セレスティア様にお祈りを始めましょう」
セレスティアという名前を聞き、どこか懐かしさを感じる。
セレスティア、つまり天界の神だ。もしかしたら私自身が天界にいたときの記憶に名前が残っているのかもしれない。
セシルと街の人たちが神像に向かって祈っている。
どこか見覚えのある神像に手のひらを合わせ、お祈りをする。
優しいセシルがこれかも楽しい生活をおくれますように。
◇◇◇
ノエルはやけに熱心に祈っている。
セシルはノエルを横目に見ながら手をおろした。
「今日もみなさんが幸せな一日をおくることができるように祈っておきました。一日頑張りましょうね」
街の人たちはそれぞれ祈りを終え、仕事に向かったり家に帰っていく。いつの間にか、教会にはセシルとノエルだけになっていた。
「ノエル様。どうでしたか?」
「この街の人は良い方ばかりですね」
ノエルが目を細めて、今まで街の人たちが座っていた場所を愛おしげに見つめている。
「私、祈るのは初めてだったんです。天使の役目はもらった祈りができるだけ叶えられるように少しお手伝いするだけでしたから」
「そうなんですね」
「今日、こうして祈ることができて人の思いが少しわかった気がします。他の人のために祈れることがどんなに素敵なことなのか」
嬉しそうに笑うノエルを見て、思わず聞いてみてしまった。
「どんなお願い事をされたんですか?」
「え!」
そんなことを言われると思っていなかったのかノエルは慌てている。聞いてはいけないことだったみたいだ。
「セ、セシルには内緒です」
「えーと、つまり他の人にはお願いごとの内容言えるんですか?」
「い、いえ、なんというか、セシルには特に言えないだけです!」
頬をりんごのように紅潮させながら話すノエルはとてもかわいい。でも、自分だけには言えないなんて、少し悲しくなる。
いつか知れる日がくるといいなと考えながら次の仕事をこなしていくのだった。




