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恋する天使様の奇跡

「う、うう……」


 光とともに暴風が吹き、セシルは吹っ飛ばされ意識を失っていた。

 瓦礫をかき分け、ゆっくりと起き上がる。体中が痛い。頭がくらくらした。


 倒したのかわからない。

 辺りは砂埃がたって真っ白だ。勇者一行の姿が見えない。隣りにいたノエルもいない。


「セシル……」

「ノエル!」


 瓦礫の下から声がした。

 無我夢中で瓦礫をどけると、そこにはノエルがいた。血が体中から出ていた。ヒールを使い、傷を癒やすとノエルは笑った。


「天使が人間に治してもらうなんて」

「ふふ、少しおかしいですかね?」


 傷を治し終えると、手を引きノエルを起き上がらせる。


「どうなったんでしょう。勝ったのですか?」

「それがよくわからなくて」


 アレスが喉元に剣を突き刺したと同時に暴風に襲われたから結末はわかっていない。


「セシル、伏せて!」


 え、という間もなくまたも暴風に襲われる。

 地面にしゃがみ込み、必死に飛ばされないように抗う。暴風が止むと、砂埃は晴れていた。


「なんで、まだ生きているなんて」


 ドラゴンは頭を地面から上げると、黄金の瞳でセシルとノエルを捉えた。

 羽は黒煙を帯び、必死の攻撃でつけた傷もなにもなかったように塞がっている。


「っ……」


 足がすくむ。

 周囲を見渡すと勇者一行が倒れているのを見つけた。身動き一つしない。生きているのかもわからない。


 もう無理だ。ただの牧師一人がドラゴンに勝てるはずがない。また自分は大切なものを失うんだ。

 俯くと、涙がポロポロと溢れた。


「まだ負けていません」


 かすかな足音が横から聞こえた。

 ノエルが前に一歩ずつ進んでいく。


「ノエル、危ないです!」

「私の最後の力を使えば」


 ドラゴンが咆哮する。今度は最初よりも重く、深く、世界を圧し潰すような叫び声。セシルは恐怖からその場に崩れ落ちる。


「セシル、今までありがとう。私、幸せでした」

「待って、行かないで」


 ノエルが笑った。

 目元に涙を浮かべて、消え入りそうな寂しく優しい笑みを浮かべる。


「セシル、好きです」


 セシルに背を向け、ノエルはドラゴンに近づいていく。

 月光の光を浴びノエルの背中の羽が輝く。ノエルがドラゴンの前にしゃがみ込み祈りを捧げると、不揃いの羽根が一際輝いた。


「嫌だ、嫌だ!ノエル!」


 さようなら、とノエルの優しい声が耳元に響いた。


 純白の羽根が空を世界を埋め尽くす。壊されていた街も教会も綺麗に元通りになっていく。自分の傷も癒えていく。

 涙で視界がぼやける。白い羽根がセシルを温かく包みこんだ。

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