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むーっとする天使様

   ◇◇◇


「セシル!おはよ!」

「おはよう」


 セシリアがいると調子が狂う。いつもの敬語にもボロが出てしまう。幼馴染であるセシリアにはいつもタメ口だったからだ。


「おはようございます、セシル」

「おはよう…ございます、ノエル様」


 危ない、ノエルにもタメ口で話すところだった。冷や汗をかいていると、クイッと服を引っ張られた。


「別に敬語じゃなくてもいいんですよ?」

「え、それは……」


 ムーっと頬を膨らませてお願いしてくるノエルは可愛い。これを期に敬語を外してみようかな、と考えているとセシリアが飛び出したきた。


「二人とも敬語なんだねー!本当に牧師様とシスターってかんじ!」


 セシリアのツッコミにセシルははっとする。

 ノエルは天使なんだから牧師である自分が敬うのは普通のことなのでは。逆にタメ口なんて恐れ多い。


「えっと、ノエル様は私の尊敬できる方ですからこれからも敬語を使わせてください」


 セシリアの前でノエルが天使だからということは言えない。尊敬できることは本当だ。


「そう、ですか」


 ノエルはそっと掴んでいた服を離した。嬉しそうなだけどどこか寂しそうな表情をしていて、セシルはノエルを思わず引き止めてしまった。


「え、セシル?」

「あ、えっと」


 自分でもどうして引き止めてしまったのかわからなくてあたふたする。

 すると、セシリアがセシルとノエルを引き剥がした。


「はいはい、私お腹すいた。セシルのごはん食べたい。ホットケーキがいい」

「わ、わかりました」


 セシリアの注文を受け、キッチンに向かう。

 パパッと準備を整え、ホットケーキを焼いていく。昔もよくセシリアのために焼いていたなと思い出した。彼女はホットケーキの上にチョコでハートを書いて、果物ものせてあげるととても喜んでいた気がする。

 記憶を頼りにセシリア好みのホットケーキを焼いていく。


「お待たせしました」


 セシリアとノエルの前に出来立てのホットケーキを並べる。


「セシル、これ!」

「確かセシリアはそうしたらよく喜んでいたなと思い出して」


 セシリアは今にも泣きそうになりながら満面の笑みを見せた。


「ありがとう、セシル!やっぱり大好き!結婚しよ!」

「け、結婚!?」


 ノエルが椅子から立ち上がる。

 そして顔面蒼白になりながらセシルに何かを訴えかける。


「セシリアがよく言う冗談ですよ。セシリア、そういう冗談やめてください。私は結婚しませんよ」


 そうですか、とノエルは椅子に座り直しホットケーキを食べ始めた。

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