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はじめまして、天使様

 嵐が街を襲った夜。牧師であるセシルは街の人々との会議が終わると、急いで丘の上に建つ教会を目指した。


 突然の雨だったから傘は持っていない。雨が体に当たる痛みに耐えながら丘を駆け上る。ようやく教会の明かりが見えた。

 

 セシルはほっとため息をついて、扉に近づく。だが違和感に気づいた。扉がほんの少し空いていたのだ。こんな雨のなかわざわざ教会に祈りに来る人はいない。もしかしたら盗みに入られたのかもしれない。


 セシルは勢いよく扉を開ける。


「誰かいるんですか?」


 教会はいつもと変わらず厳かな空気で満たされていた。

 コツコツと自分の靴の音が響く。


 少し歩くと、神像の前に一人の少女がうずくまっているのが見えた。思わず声をかけようとして躊躇う。なぜなら少女の背中には普通の人間にはないものがあったからだ。そしてその姿はまるで――。


「天使様……?」


 背中から生える二本の純白の羽。その羽根は小さな頃に祖父に読んでもらった絵本の天使と同じものだった。いや絵本の中の天使よりももっと神々しい。


 ピクリと少女が動いた。


「だ、大丈夫ですか!?」


 セシルが少女の体を揺さぶると、少女はゆっくりと瞳を開けた。


 目があった。そう思った瞬間シリルは確信した。この少女は天使なのだと。透き通るような金髪、宝石のような空色の瞳。それは自分たちを導く天使と同じ特徴だ。


 天使は弱々しく口を動かす。


「え、なんと言ったんですか?」


 もう一度天使が声を出そうとするが、かすれて何も聞こえなかった。


「とりあえず、ベットに行きましょう」


 困っているならば、誰であろうと助けたい。私がいろんな人に助けてもらってきたように。


 抱き上げてみると天使は羽のように軽かった。


 いきなりのことに驚いたのか天使は驚き自分で歩こうとする。セシルはそれを制止させると優しく囁いた。


「大丈夫です。ここは教会ですから、困っている方がいたら誰でも助けます。ですからご安心を」


 教会と聞き、天使は少し落ち着いたようだ。体をぎこちなく腕に預けてきた。天使は疲れ切っているようだ。腕の中で眠たそうに必死に瞼をこすっている。


「寝ていいんですよ。おやすみなさい、天使様」


 天使はゆっくりと瞼を閉じた。

 

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