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占い師と魔女たちのから騒動  作者: 阿井 亜斗


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3/3

3.

 4日後の夜、男がやってきた。

「なにかわかったか?」


 あいさつもそこそこ男はソフィアに尋ねた。

 4日前と姿は変わらずに


「ええ。少しは。」


 ソフィアは答えた。


「あなたが、フルゴス家の方だということは。」

「ほう。」


 男は、感心した顔をした。

 

 この国では4つの貴族が権力をもっている。

 フルゴス家はそのうちの一つだ。

 

 身分が高い家は、色々ごたごたがあるものだ。


「あなたは、現当主の長子ではあります。が、ご母堂が身分が低いため後継者とは認められず、またご当主からは息子とも認知されてないため、存在自体が秘されていました。それがなぜかここ数年、フルゴス家の本家に出入りが認められています。」

「そこまでわかれば十分だ。出入りも気を付けているが、まあ普段と違うことがあれば気づかれてしまうものだしな。」

「そうですか。」


 男の質問に気のない返事で返した。

 本番はここからだ。


「あなたの宝、見つかりましたよ。」

「本当か!」


 男はその言葉に思わず声を上げたが、すぐ落ち着きを取り戻したようだ。


「はい。あなたの宝を見たものがいました。港の倉庫でした。」

「港だと?」

「はい。どうやらあなたの宝をもっていったものは、ただのやくざ者のようでした。金を手に入れるために、目に入ったよさげなものを手に入れ売り飛ばそうとしたようです。」

「そうか。」


 男は淡々と聞いていた。


「売りに出されるのは明後日の夜です。場所も、港の倉庫そのままとなっております。」

「それは信じるに値するのか?」


 探るような目でこちらを見た。


「探してもどうにもならなかったから、ここに来たのでは。」

「そうなんだが・・・。」

「・・・では、誓いましょう。」


 ソフィアは一旦言葉を止めた。


「魔女である、あなたのご母堂に。」


男は、ソフィアの言葉から少し驚きの顔をだした。


「・・・信じよう。」

そして、静かに返事をした。


「報酬は宝を取り戻したあとで大丈夫です。どのように取り戻すかは、あなた方の役目でしょう。」

「わかった。成功したら全額、報酬を渡そう。」


 男は椅子から立ち上がった。


「幸運を。」


 ソフィアは男に伝えた。

 その言葉に男は笑顔を見せた。





「ありがとう。宝は見つかったよ。」

 あれから1週間、男が占いの館に訪れた。


 男は忙しかったらしく疲れが見えたが、宝が見つかったことによる安堵感の方が強く見えた。

 報酬は指定の場所に送金されており、満額もらっていた。



「しかし、よく俺の母が魔女だとわかったな。俺が知る限りは、母は同類とは横つながりがなかったようだったが。」

「蛇の道は蛇と言いますので。」


 男の母親が魔女だということは、同類のため逆にわかりやすかった。

 他の魔女と関わるタイプではなかったようだが、魔女は同類に敏感だ。

 そのため、覚えている魔女がいたのだ。


 息子と一緒に市井で暮らしている魔女である母親姿を。


「さすが魔女たちといったところか。」

「ありがとうございます。あなたの情報は中々出てこなくて大変でした。」


 ソフィアはジロと男を睨んだ。


「あなた自身も情報を出してくれませんでしたし。」

「すまない。あの時には、誰が敵かわからなくてな。アランにも、アランの上司にも俺自身の情報も宝のことも言えなかったため、あのような言い方になってしまった。」

「あなた自身も機密の塊でしたしね。よく、ご当主からここに来ることの許可が出ましたね。」

「ここに来ること自体には拒否感はなかったらしい。母親が魔女のことは知っていたからな。」

「ご当主自身は以前はここの常連でしたからね。」


 この占いの館は魔女たちからの色々な情報が集まる。

 そんな所のため、もちろん後ろ盾がないと危ないのだ。

 色々な後ろ盾を持っているため、中立的な立場を維持していた。


 そのため、情報は権力者にそれぞれに渡しており、パワーバランスが保たれていた。


「ああ。当主は前任者である婆が去ったことで、常連はやめたらしい。俺に後任になって欲しかったのかもな。」

「そういうことですか。」

「そういう訳で、どうだ?俺をここの常連にするのは?」


 このような依頼の時は、一見さんお断りとしている。

 何が起こるかわからないからだ。

 ただ占いをしに来る客はともかく、常連になるためには重鎮の魔女たちの投票を7割ほど取得しなければならない。



「あなたは合格ですよ。」

「それは、よかった。」


 実は、重鎮の魔女たちから投票7割取れていた。

 理由としては、ここの後ろ盾に丁度良いということだ。

 いま現在、ここの占い館の後ろ盾が偏っており丁度いい権力者がいないか悩んでいたところに、この男がきた。

 渡りに船とはこのことだ。


 それを見越して、当主はこの男をここによこしたのかもしれない。


「あなたの宝である、弟君はお元気ですか?」


 そう、この男の宝とは表向きは長男であり、この男の弟だった。

 お忍びで、街に探索に出て誘拐されたらしい。

 誘拐の瞬間を目撃されており、そこから12歳ほどの大きさの荷物が港に行く情報が届いた。

 裏どりを取るため、馴染みの娼館に通う倉庫の責任者に娼婦の魔女が問いただしたそうだ。


 責任者は肝が小さく、尋ねた瞬間すごくわかりやすく内心を読み取れたとのことだった。


「ああ。流石に助け出された直後は元気がなかったが、子ども特有の回復力で元気にしているよ。身体にも心の方にも後遺症がないようだ。ほぼ、気絶していたのがよかったのかもな。」


 男は弟を思い出したのか笑みを浮かべていた。

 どうやら、正妻とこの男の母親は仲が良く、むしろ正妻がこの男と母親の庇護をしていたらしい。

 それに恩を感じてもおり、弟も母親違いの兄を慕っているようだった。


「それはよかったです。」


 思わず、笑顔を見せた。

 子どもが犠牲になるのは、嫌いだ。

 子どもでなくても嫌だが。


 男も雰囲気でソフィアが笑ったのが分かったのだろう。

 男も笑顔を見せた。


「そういや、今更だが俺の自己紹介をしていなかったな。」


 男は、自己紹介をした。


「俺は、アレクサンダーだ。アレクと呼んでくれ。」


 この男は、父親である当主はどうでも良いようだが、後継者である弟のため家の暗部や守りを鉄壁としているため、自分自身でさえ弟の足を引っ張ると思っているのか仮の名前を名乗っていたようだった。


 紹介された名前はここで名乗る仮の名前なのかと思った。

 ところが。


「本名だ。」

「・・・なぜ。」

「母には前から言われていた。あなたにとって父親のことはどうでもいいと思うが、奥様とご子息に迷惑をかけることは許せない。と。」

「はあ。」

「だから、あなたの本当の名前は奥様やご子息に伝えず、仮の名前を伝えるようにしなさい。いざという時に、切り捨ててもらえるように。」

「はあ。」


 話が読めない。


「もし、本当の名前を言うときは、一生ともにしたいと思える相手に言いなさい。」


 んっ?


「とうわけで、よろしくな。」


 これは本気なのだろうか?

 一応、いさめておくことにする。


「落ち着いてください。顔も素性もわからない女を相手にするのはどうかと。」

「いまから知っていけばいいではないか。」

「ちなみにここの占い師は中立でいるため、常連と恋愛はできません。」

「大丈夫だ。俺はお前が婆になっても待てる。俺ももとから日陰者だしな。」

「あのですね・・・。」

「当主から聞いてるから大丈夫だ。」


「婆の実の娘が、占い師にならずに俺を生んでいるからな。」


 そうなのだ。

 だから、この男ことアレクの母親は同類と絡まなかったのだ。

 婆の元にいるときから、後継として育てられ周りの魔女にも知られていたが、ある時出奔。

 力も強い魔女のため他の魔女からの隠れて暮らせたのだ。

 そのため、同類とは絡まなかったが、そこは魔女。

 覚えているものがいたのだ。


「だから、当主は婆に援助をおしまなかった。後ろめたかったんだろうな。」

「・・・結構無茶いっていたみたいでしたね。」


 あれは姑が娘の夫をいびっている図だったと、他の魔女から聞いた。


「そんな母を持っているから、相手を見誤ることはない。二人きりの時は、名前で呼んでくれ。」


 正妻がいるのに他の女に手をだしている父親の息子の言葉とは思えない。

 

「もし、二人以外の時にその名前をよんだら、お前を殺さなくてはならない。」


 これは、自身の名前を言うことで今回のことで余計な事を言うなという牽制なのだろう。

 弟のお忍びであわや誘拐され、売られようとなっていたということになったら、他の家に対しての弱みになる可能性になるのだ。


 内心ため息を吐いた。


 そんなソフィアを、とろけるような笑顔でライアスをじっとみていた。

 感情をうかがわせない表情で。

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