1.
「俺の宝を探してほしい。」
男はソフィアにそのように言った。
場所は占いを生業としているソフィアが切り盛りする占いの館である。
館と言っても、ただの怪しい古びた建物なのだが。
ソフィアは子どもの頃お腹が空いてフラフラとなり路頭に迷っていたところ、路頭に迷おうとしていたところ占い師の婆になぜか拾われた。
なぜ、拾ったのか聞いたら「占い師としての見込みがある。」と、このかた霊感や奇跡の力などといったものは発揮したこともない。
だが、拾われた多少の恩と婆に教えられたことを覚えた。
そこから、婆は教えることはもうないとこの館をもらい、婆はどこにかに行ってしまった。
婆とはそれ以来会ってない。
「ここの占い師は、本物の魔女だと聞いたぞ。」
占い師らしく、外套でフードと口もとを隠し、目元だけ見える格好をしているソフィアは顔をしかめた。
魔女は古来より、ひっそりと暮らしていた。
理由としては、類まれなる遠見としての力があり、権力者に重宝されたのだ。
重宝されたのなら問題ないと思うかもしれないが、魔女は力を持ちすぎた。
魔女に遠見の力があった時はいいが、年を取ればどんな力も劣りだす。
力自慢や美貌と一緒だ。
魔女の遠見の力もその例にもれず、力がなくなり権力者からの庇護がなくなった途端に迫害され、死んでいったものが多かった。
いまだに権力者のそばに仕える魔女もいたが、大部分は表舞台から姿を消した。
そのため、今時魔女と公言しているものはインチキで稼いでいる者たちだ。
占い師もその一環ではある。
ソフィアの仕事ももちろんインチキだ。
占い師を訪れるものは、娯楽となり果てているのを承知で客はきており、ただ他人と話したい、愚痴を言いたい、家族のことを話したいなどで訪れることが多かった。
ただ単に恋愛や家族、仕事といった人間関係の相談や愚痴などといったかわいいものだが。
ソフィアは占い師というインチキの才があったためか、、引き続き来店するお客のほうが多かった。
大体の客はソフィアに話を聞いてもらうと、満足にして帰っていた。
婆の人脈で食いつないでいけるだけの客がきていたため、おおむね満足した生活を送っていた。
面倒な客がくるときもあるが。
その面倒な客代表であるのが目の前の男だ。
年のころは20代半ばぐらいだろう。
黒い髪と黒い瞳をしている珍しくもない色合いだが、顔は端正にととのっておりどこからし品を感じさせた。
育ちがいいのかもしれない。
そして冒頭の言葉が男から紡がれた。
「お客様。訪れる場所をお間違えではないでしょうか?」
「なんだ。違うのか?」
男は真面目な様子でソフィアに問いかける。
「前任者でしたらもしかしたらそうだったのかもしれないですけど、ここに今いるのはどこにでもいるインチキな占い師です。」
「なるほど?前任者は婆さんと聞いたが、今はどこに?」
「さあ?ここを残してどこかに行ってしまいました。」
男はそこで考えるそぶりをした。
「お前では、俺の宝はわからんか?」
「無理です。」
奇妙な客だ。
宝の内容も自分の名前をも名乗らずに、ただ要求だけをする。
傲慢な客だとは思ったが、もしかしたら切羽詰まっているのかもしれない。
服の様子などは地味な質の良いものきており、色が暗かったため気づかなかったがよくみると薄汚れているのかもしれない。
「探してくれ。俺の宝を。」
「聞いてました?ただの占い師なのでわかるわけ、」
「いや、わかるはずだ。」
確信がありげに男はいった。
「お前を認めそのまま残ったものも多いだろう。なら、問題ないのでは。」
こいつを紹介したヤツ、しめる。
婆さんの昔馴染みとはいえ、出禁にする覚悟も辞さない。
「・・・私がここにいるのは、管理しているにすぎません。」
「婆さんもそうだったんだろ。金は弾む。」
「金でどうにかなる問題でもなさそうですが。」
「失敗しても責は問わない。」
金額は、一人だったら一年間は余裕で暮らせる金額だ。
ずいぶんと金払いがいい。
これは断れない話だとあきらめた。
「・・・承知しました。期限はいつまで?」
「1週間。」
報酬がよく、期間が短い。
これはよくないことに巻き込まれたと、内心ためいきをはいた。




