第1話 ■果の破■者 ■やかな日■が■わる――■たされた器■■で
悲しみよりも先に、冷たい疑問が脳裏を支配する。彼らは優秀だった。ただの戦闘で全滅するなどあり得ない。
男は連合軍に詳細な情報の開示を求めた。だが、軍上層部は機密事項の一点張りで、頑なに口を閉ざす。
その態度が、隠蔽を確信させた。
独自の調査を開始するため、男は禁断の領域に踏み込む決意をする。
己の虚室と呼ばれる空間に居座るシンギュラリティに求めるだけでよかった。男の中に冷たい何かが入り込み、腕や足といった末端に銀色のラインが刻まれていく。そして人を超越したという感覚が、自身の存在全てを満たす。
だが――虚しいだけだった。
あのとき、この力があれば、などとは思わない。だから後悔とは違う。
その理由は自分でも分からない。ただ虚しいだけだった。
残ったのは、淡々と事実を受け止めているだけの自分。あっさりしたものだ。まるで、アイツらの死が紙切れ一枚で通達されたときのように……。
冷たい苛立ちと共に、隣に立っていた木を素手で殴りつける。あっさりと粉砕し、自分が人間をやめかけていることを思い知らされた。
しかし、それがどうだと言うのだ。このまま、アイツらを過去に置き去りにして、ホコリを被せるよりもマシだ。
ああ、そうだ。今や男と弟子達の繋がりは、アイツらのいた心の場所に空いた、この穴だけなのだ。
そう思うと、冷たい激情が心の穴から溢れてくるかのようだった。より多くの力を求めようと、シンギュラリティに語りかけようとしたとき、アイツらの顔が思い浮かんだ。
「はは、怒られちまうな」
これ以上の力を求めるのはやめておこう。そう決めて、地道に情報を集めることにした。
力があれば、金を得る方法はいくらでもある。そうして稼いだ金を使えば、連合軍の中枢にいる奴らに近付くのは簡単だった。
そして、真実を知った。弟子達は英雄として死んだのではない。無能な上官――リヒト・シュナイダー大佐が、敵前逃亡するための囮として使われたのだ。
脳髄を灼くような憎悪が湧き上がる。だが酒を飲んで、激情を誤魔化した。
弟子達に、怒られるような事はしないと決めていたからだ。
この気持ちを捨てたら、彼らとの繋がりが本当に無くなってしまう。だが、より多くの力を得ればいいと、男の弱い部分が囁く。
シンギュラリティの力を使えば、大佐はおろか、その部隊ごと消滅させることなど簡単であると。
握りしめた拳が震える。
復讐は、彼らが望むことではないのは分かっている。彼らの死を、ただの殺戮の引き金にしたくはないという自分の気持ちも分かっている。
ギリギリのところで理性を繋ぎ止めようと、激情は酒と共に飲み込んだ。




