表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
12/40

第1話 ■果の破■者 ■やかな日■が■わる――■たされた器■■で

 悲しみよりも先に、冷たい疑問が脳裏を支配する。彼らは優秀だった。ただの戦闘で全滅するなどあり得ない。


 男は連合軍に詳細な情報の開示を求めた。だが、軍上層部は機密事項の一点張りで、頑なに口を閉ざす。


 その態度が、隠蔽を確信させた。


 独自の調査を開始するため、男は禁断の領域に踏み込む決意をする。


 己の虚室と呼ばれる空間に居座るシンギュラリティに求めるだけでよかった。男の中に冷たい何かが入り込み、腕や足といった末端に銀色のラインが刻まれていく。そして人を超越したという感覚が、自身の存在全てを満たす。


 だが――虚しいだけだった。


 あのとき、この力があれば、などとは思わない。だから後悔とは違う。


 その理由は自分でも分からない。ただ虚しいだけだった。


 残ったのは、淡々と事実を受け止めているだけの自分。あっさりしたものだ。まるで、アイツらの死が紙切れ一枚で通達されたときのように……。


 冷たい苛立ちと共に、隣に立っていた木を素手で殴りつける。あっさりと粉砕し、自分が人間をやめかけていることを思い知らされた。


 しかし、それがどうだと言うのだ。このまま、アイツらを過去に置き去りにして、ホコリを被せるよりもマシだ。


 ああ、そうだ。今や男と弟子達の繋がりは、アイツらのいた心の場所に空いた、この穴だけなのだ。


 そう思うと、冷たい激情が心の穴から溢れてくるかのようだった。より多くの力を求めようと、シンギュラリティに語りかけようとしたとき、アイツらの顔が思い浮かんだ。


「はは、怒られちまうな」


 これ以上の力を求めるのはやめておこう。そう決めて、地道に情報を集めることにした。


 力があれば、金を得る方法はいくらでもある。そうして稼いだ金を使えば、連合軍の中枢にいる奴らに近付くのは簡単だった。


 そして、真実を知った。弟子達は英雄として死んだのではない。無能な上官――リヒト・シュナイダー大佐が、敵前逃亡するための囮として使われたのだ。


 脳髄を灼くような憎悪が湧き上がる。だが酒を飲んで、激情を誤魔化した。


 弟子達に、怒られるような事はしないと決めていたからだ。


 この気持ちを捨てたら、彼らとの繋がりが本当に無くなってしまう。だが、より多くの力を得ればいいと、男の弱い部分が囁く。


 シンギュラリティの力を使えば、大佐はおろか、その部隊ごと消滅させることなど簡単であると。


  握りしめた拳が震える。


 復讐は、彼らが望むことではないのは分かっている。彼らの死を、ただの殺戮の引き金にしたくはないという自分の気持ちも分かっている。


 ギリギリのところで理性を繋ぎ止めようと、激情は酒と共に飲み込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ