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「……何を調子に乗っているの?あなた少し、考え違いをしているようね。」

 冷たい眼差しで、真冬さんは心春を一瞥した。

 当然のことながら、言われた心春はキョトンとした。

「へっ、考え違い?ってーと、え、なに?」

「確かに心春はきれいになったわ。でもその隠されていた美を引き出したのは、あなた自身ではないでしょう?私が導いたの。私のおかげ。おわかり?つまり心春は、この八王子真冬の創造物と言っても過言ではないの。」

 心春にぐいっと顔を近付け、真冬さんがけっこう無茶なことを言い出した。創造物て。あなた美容院紹介しただけじゃないですか。

 ともあれ、想い人に至近距離でにらまれ、心春はたちまち赤くなった。言われている内容は、あまり耳には入っていなさそうだった。

「えー、いやぁ、その……。ちょ、ちょ……?真冬?真冬サン?」

 更に顔が寄っていく。お互いの鼻先が触れ合いそうな距離だ。

 真冬さんの細い指が、心春の頬に触れた。顔を両手で挟み込むようにして、心春の目をのぞき込んだ。眼球の裏側まで見通すように、じっと。

「二人も告白を断った、ですって?そんなのは当然よ。断って当たり前。自慢することではないわ。なぜだかわかる?あなたはもう、私の所有物だからよ。」

「しょ、しょゆ、しょうゆ……?」

 動揺した心春が、しょうゆ取ってほしい人みたいになった。こんな彼女を見るのは初めてだった。

「人形が自分の意志で、持ち主を勝手に変えられるわけがないでしょう?許されるはずがないわ、そんなこと……。これから私の許可なく、恋人を作れるだなんて思わないでちょうだい。理解していただけたかしら、私のかわいいお人形さん……?」

「は、はひ……。」

「あらあらまーまー!まーちゃんってば、とっても大胆!すごいわー!お姉ちゃん恥ずかしくなっちゃう!ドキドキしちゃう!」

「いやー、妹のこんな顔を見られるなんて、真面目に部活出ててよかったなー!少し感動しているよ、ボクは!」

「わーい、粘着質の真冬ちゃんも素敵よー!」

「心春ちゃんいいなー!あたしも真冬ちゃんに粘着されたーい!」

 みんなのテンションが、一斉に爆上がりする。

 よし、まあ、計算通りだ。なんだかよくわからないけど、心春の告られ話を契機にして、まんまと話題は私の誕生パーティから遠く離れていった。よかった。

「は?あなたたち、いったい何を言っているの?まるで私が、心春に執着しているかのような言いぐさじゃない。この子が私のものなのは、単なる事実よ。そうでしょう?」

「きゃー!」

 真冬さんの言葉に、双葉たちがまた黄色い歓声を上げた。

 更にわいわい盛り上がっている輪から、私はそっと抜け出した。

 そして……。

 今日は一言も発していない、引っ込み思案な不良少女の方へ近寄った。


「……英子。」


 部室の隅にいる英子に、声をかけた。

 すると彼女は、パッと素早く顔をそむけた。私を避けるみたいに。

「今日は話しかけんなっつったろ。」

「でも。」

「だめだっての……、ほ、ほら、もう耳とかあっつくなってるし……!照れちまうんだってば、あーもう、やだ……!」

 英子は顔を手で覆って、そのほてりを隠した。

 いろいろ思い出して真っ赤になってしまうから、今日は近くに寄らないでほしい。そう言われていたのだ。

 そんな純情乙女な英子の様子に、キュンと胸が切なくなった。

 またキスがしたい。そんなことを思った。

「大丈夫。今みんな、こっち見てないから。」

「けど、よ……。」

「ちょっとだけ。ね?」

 そうお願いすると、英子は両手で口元を隠すようにして、頬を赤らめたままコクリと頷いた。

「かわいいわね、英子……。」

 つい、小さなひとりごとを漏らしてしまった。あまりのキュートさに、うっとりしてしまったのだ。

 彼女のやる全ての仕草が、私の恋心、そして劣情を刺激した。

 英子をひとりじめしたい。強く、そう思った。

「かわいいって、なんで友香は、そういう……、ばかじゃん、ばか……。」

 英子はくるりと背中を向けた。

 私の恥ずかしいひとりごとが、聞こえてしまったらしい。呆れさせてしまったようだ。

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