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 放課後。

 競技ジグソー部は、いつもの通りにぎやかだった。

 部室での話題は、いったん心春の髪について盛り上がった後、私の誕生日の話になった。

「あらまあ、素敵ー。じゃーあー、当日は部活お休みにして、この部室で戸成さんの誕生パーティしなくっちゃねー?」

「わーい!ママ、ナイスアイディア!」

「よかったね、友香ちゃん!じゃープレゼントなんにしよっかなー!考えなくっちゃ!」

「ちょ、ちょっと……、そんな、いいですよ?申し訳ないですって。」

 意外な話の方向に、私はとまどった。

 部活動の時間がそのままパーティになるなら、告白プランに支障はでない。でも、私は人にお祝いされるのが少し苦手だった。気おくれしてしまうのだ。

「いいのいいのー。沙織先生には、ちゃーんと私から許可取っておくしー。」

「うん、『指導の鬼』なんて呼ばれてる鬼山先生だけど、千秋さんにはやたらと甘いからね。なんだってオッケーが出るよ。」

 部長と副部長が、話をどんどん進めていこうとする。

「あの本当に、私……。」

「観念なさいな、戸成さん。この人達ったら、そういう楽しいイベントが大好きなんですもの。あなたの誕生日と聞いて、黙っていられるはずがないわ。ま、浮かれ騒ぎの口実にされて、面白くないのはわかるけどね?」

 真冬さんが頬杖をついて、こちらを見ながら上機嫌にくすくす笑った。

「えー、でも……。」

 少し照れて、視線をそらしてしまった。美しい真冬さんにまともに顔を見られると、私でさえもドキッとしてしまうのだ。

 私の好きな人はみんな彼女が好きだけど、それも仕方ないな、という気持ちにさせられた。悪感情はまるで湧いてこなかった。

「もー、まーちゃんったら意地悪ね?騒ぎたいから言ってるんじゃなくってー、私達みんな、ちゃーんとお祝いしたいって思ってるわよー?ね、なっちゃん?」

「ん?そう……その通りさ!ああ子猫ちゃん、君が世界に産声を上げた素晴らしき日を、どうかボクに祝福させておくれ!この燃え盛る愛と同じくらいに真っ赤なバラを、部屋いっぱいに敷き詰めてあげるよ!」

「あ、お気持ちだけで大丈夫です。」

 なっちゃん先輩の迷惑な申し出を、ひょいと片手を挙げて断った。

 まあ部長が「完コピすごーい」と拍手しているので、実際は私に向けて言ったんじゃないだろうけど。ふと「セシルちゃんのモノマネチャンスだ」と気付いてぶっこんだんだろうけど。

 でも正直なところ、副部長のこういう布教活動のせいで、いつのまにか「セシルちゃんウザかわいいかも」とも思うようになっていた。すぱぷりとやらは一度も見たことないけど。

「まっ、それはさておき。」

 モノマネをやめたなっちゃん先輩が、ぱちんと指を鳴らして私を指さした。

「話を戻すけれど。みんなが戸成くんをお祝いしたい、というのは本当さ。少なくともボクはね。なんせ君は未来のジグソー部を支える、有望な一年部員だからさ?」

「あら?去年はずっと幽霊部員だった人が、なんだかしれっと副部長ヅラしているわね。おかしい。」

「シャラップ!」

 せっかくのいいセリフを混ぜっ返す妹に、なっちゃん先輩が怒った。

「でも私、競技ジグソー全然弱いのに……。」

「いーじゃん友香。つまりみんなさー、友香のこと好きってことじゃんか。日ぃあらためてがっつりパーティするほどじゃないけど、放課後ちょっと騒いでお祝いする程度にはさー。好感持ってるーくらいな感じ?」

「あー、まあ、気が楽になる言い方だけれど。」

 嘘のない心春の物言いに、でも本当に、気が楽になった。だったらまあ、お祝いしてほしいかも、という気持ちになった。

 それに……。

 気おくれはするけど、私は本当は嬉しかった。こんな素敵な人達が、平凡な自分を祝ってくれるということが。中学時代の私からしたら、きっと想像もできないことだ。競技ジグソー部に入ってよかった。

「あ、友香ちゃん今、まんざらじゃないナーって顔してたー!」

「まんざら友香ちゃんだー!」

 ちょっとニヤけている私を、二来と双葉が目ざとく見つけた。そういうの、本当に恥ずかしいのでやめてほしい。カーッと顔が熱くなる。

「う、うるさいわね……。もうこの話いいでしょ?それより、ほら、あの……。あ、そうだ、先輩方知ってますか。今日心春、男子から告白されたんですよ。それも二人も。髪切ったとたんにこれなんだもの、すごいですよね。」

 照れた私は、超強引に話を変えた。

 すると心春が、小さな声で「その話題に触れんのー?参ったなー」とぼやいた。ごめん。

 でも私は、とにかく話の流れを変えたかったのだ。私の誕生日という話題から、離れてほしかったのだ。

 照れくさいというのもあるけれど、ちょっとそろそろ、一対一でじっくり話し合いたい相手がいたのだ。そのためには、会話の輪からこっそり抜け出す必要があった。みんなに誕生日以外の話題で盛り上がってもらう必要があった。


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