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「あんましカリカリすんなよなー、朝っぱらからさー。ほんで、私の好きな女がどうしたって?」
「どうしたっていうか……。だからまあ、私もね?最近好きな女の子できたから、奇遇だなあって。」
「マジでっ?!」
私の言葉に、さすがの心春も驚いた顔になった。
「ほうほうほう、そっかそっか、そうですかー!平凡同盟二人そろって、高校で女子相手に初恋デビューかー!なんちゅーか、感慨深いなー!」
「私は別に初恋じゃないけど。とっくに失恋して、次の今の恋にいってるわけだけど。」
「あ、そーなん?全然知らんかった。」
心春のリアクションに、思わず私は苦笑した。
「でしょうね。あんたに全然知らせないまま、こっそり始まってこっそり終わったから。」
「ほーん、イケズどすなー。うちはあんたの親友と違うん?」
「インチキ京都弁で抗議されてもね。別にいいでしょ、今の現在進行形の恋は、こうして白状しているわけだし。」
「まー、そりゃそっか。んで、いつ告白すんの?」
「えっ?」
あっけらかんと聞かれて、私は一瞬絶句した。
「いや、あの……。逆に聞くけど、心春はするつもりなの?その、告白……。」
「はー?そりゃーするでしょ。好きなんだし。」
恥じらいもてらいも迷いもなく、彼女は即答した。
そうだ、心春はこう言う女だった。
ちゃらんぽらんで変てこりんだけど、肝心なところでは真っすぐな娘。それが私の初恋の人だ。私が恋をしていた人だ。
「え、つーか、友香はせんの?告白。好きなのに?」
不思議そうに、心春が聞いた。率直に。
私は少しだけ笑った。
「……するわよ、決まってるじゃない。大好きなんだから。」
「あ、だよねー。」
うんうんと、心春が頷く。
そうだ。私は、英子に告白しようと決心したのだ。駅のホームで抱きしめられたときに。
迷惑をかけてしまう。しょせん自己満足。それでも構わない。
あふれそうな気持ちを伝えたかった。
ぶざまに振られるとしても、それでもいい。
私は見たくなってしまったのだ。彼女に「好き」と伝えた先の物語を。今の関係から、一歩踏み出した先の物語を。
でも、ついさっきまで迷っていた。やっぱりやめておいた方がいいんじゃないか。今の関係のままでいいんじゃないか。そんな気持ちがまだ残っていた。
その迷いが、今消えた。ちゃんと言葉にすることで。
心春は無自覚だったろうけど、結果的に私の気持ちを奮い立たせてくれた。やっぱり彼女は、かけがえのない親友だった。
そんなことを考えて、ふと隣を見ると……なぜか心春は口元を手で押さえていた。
「なによ?」
「んー?なーんかさ、心の中でいいこと言ってそーだったから。ちょっと黙った。」
「ふふっ……。察しがいいのね。エスパーの素質があるんじゃない?」
「そりゃどーもー。」
歌うように言い、心春が頭の後ろで手を組んだ。




