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 降りた駅は閑散としていた。

 プラットホームから見える大きな建物は、パチンコ屋とラブホテルしかない。乗った電車の終着駅がここだっただけで、線の終点ではない。この先終点に向かうたび、もっと何もなくなってゆく。私達が住んでいるのはそういう町だ。

 次の発車時刻は三十分後だ。駅には誰もいない。

 私は手をつないだまま、少し遠くにあるラブホテルの看板をただ眺めた。

 知らない町。静かだった。人の気配がまるでしなかった。なんだか、世界が滅びる映画の中のようだった。

 ずっとこのまま、手を握りあっていたい。英子と二人で。

 ホームに佇みながら、そんなことを思っていた。失恋したばかりだというのに。

 私は平凡な女だ。本当に、つくづく平凡な女だった。

 幼なじみに永遠の片想いをしている。そんなふうなことを口では言っておきながら、近くに素敵な女性が現れたら、あっけなくその人にも簡単に惚れてしまった。

 一見不愛想だけど本当はかわいらしい、私だけをうんと甘やかしてくれる不良少女に、どうしようもなく惹かれていた。

「……やっぱり、好き。」

 想いが、口元からぽろりとこぼれてしまった。

 迂闊だった。

 つないだ手が、きゅ、と硬くなった。

 私はハッとして、その手を放した。慌てて自分の口元を押さえた。

 いけない。英子は真冬さんが好きなのに。こんなことを伝えても困らせるだけなのに。

 激しく後悔する。どうして言ってしまったんだろう。どうして我慢できなかったんだろう。

 英子は、そんな私をじっとみつめていた。

 つらそうな、苦しそうな表情をしていた。

「……そりゃそうだよな。簡単には諦められねーよな。友香は、ずっとずっとあいつが好きだったんだから……。」

 英子が、言った。

 一瞬、なんのことかわからなかった。

 それからすぐに、心春のことだとわかった。「やっぱり好き」を、心春への想いだと誤解しているのだ。

 ほっとした。

 ほっとしたけど、でも寂しかった。私の気持ちに、彼女がまるで気付いていないことに。

 いっそ、告白してしまおうか。想いを伝えてしまおうか。そんな誘惑が頭をよぎった。

 でも次の瞬間、私は先日の彼女の言葉を思い出していた。

 迷惑だ。

 確かに彼女はそう言っていた。毎日顔を合わせる相手に、眼中にない相手に告白されるのは迷惑だ、と。

 だめだ。やっぱり告白をしてはいけない。迷惑をかけてしまう。

 英子は、私が好意を寄せているだなんて夢にも思っていない。友達だから。私と英子は親友だから。その信頼を裏切るわけにはいかない。

 苦しい。また胸が苦しい。

 どうしてだろう。

 どうして私は、親友のことばかり好きになってしまうんだろう。

 こんなの、失恋するために恋をしているみたいじゃないか。ばかみたいだ。ばかだ、私は。

 じゃあ、せめて、せめて……。

「けどよ、友香。いつかその気持ちがなくなったら、あたしに教えてくれねーか?そのとき、あんたに伝えたいことがあるっていうか……」

「キスして。」

 たまらなくなり、私は言った。

 恋が叶わないなら、せめて一度だけ。一度だけ好きな人とキスしたい。そう思ってしまったのだ。


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