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 真冬さんと話す心春を、久しぶりに横から眺めた。後ろからではなく、横から。

 こうして見ると一目瞭然だった。どうして今まで気付かなかったのか、自分でも不思議なくらいだった。

 真冬さんにみつめられると、心春の視線は泳いだ。

 真冬さんに触れられると、心春の頬はポッと赤らんだ。

 真冬さんがそばに寄ると、心春は嬉しいような、切ないような表情になった。

 今まで見たことがない表情ばかりだった。私の知らない心春の顔。


 私の親友は、八王子真冬に片想いしていた。


 不意に真冬さんは片目をつぶり、口元にひとさし指を当てて、心春に何か言った。ないしょね、と唇が動いた気がした。その艶めく唇を、心春はじっとみつめていた。うっとりと、熱っぽい眼差しで。

 キスしたい。

 そう思っているようだった。

 心春は真冬さんに、キスをしたいと思っているようだった。

(そっか……。)

 神様どうか、心春に好きな人ができませんように。

 かつて私は、夜空の星に向かってそんなお祈りをした。

 でも、だめだった。

 その卑怯なお祈りは、いつの間にか神様に却下されていた。きっと私が、心春の隣にいることを諦めてしまった隙に。横顔ではなく、後ろ姿ばかり眺めている隙に。

 急に二人が、私達に背中を向けた。

 そして、横断歩道を渡って向こうに行ってしまった。信号が青に変わったのだと、少し遅れて私は気付いた。信号待ちのために、彼女達は立ち止っていたのだ。

 とても長い時のように感じたけど、実際は一分にも満たない時間だった。

「……あ、あの、さ。……あのー、話変わっけど、その、主演の女優のさ」

「ひょっとして英子、前から気付いてた?」

 わざとらしく話題を変え、たどたどしくしゃべる英子をさえぎり、私は尋ねた。窓の外をみつめたまま。

 沈黙。

 コーヒーをすする音。

 小さなため息。

「……まあ、な。今至近距離で見るまで、確信があったわけじゃねーけど。きっとそうなんだろうなって。」

 仕方なさそうに、英子が言った。

「そっか。ありがとね。だからこの前あんなに……。」

 言葉を切った。

 胸が詰まって、何も言えなくなってしまった。

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