表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
60/65

60

 まさか、英子もジャージで来やしないでしょうね。

 そんな不安を抱きつつ、私は待ち合わせ場所に向かった。



 少し早めに着いたけど、すでにもう英子は来ていた。

 その彼女の服装を見て、私はハッとした。

 ジャージで来るのでは、という不安は杞憂だった。

 英子の私服は、ラフでカジュアルだけど、彼女の魅力がよく出ている恰好だった。

 オーバーサイズの薄手ミリタリーパーカー、その内側に、ボディラインがくっきり出たタイトなVネックカットソー。赤い派手なスニーカーに、きれいな脚をむき出しにしたショートデニム。

 いわゆるストリートコーデ。

 だけどかっこいいというより、エッチだった。Vネックの胸元や肉感的な生足に、目が釘付けになってしまった。

 私がどんな女か知ってるくせに、どういうつもりなのか。私を欲情させるためにわざとそんな恰好してるのか、と思うくらいだった。

「お、お待たせ。晴れてよかったわね。」

 興奮を押し隠し、声をかけた。

「おう……。」

 英子はちらりとこっちを見ると、すぐに目をそらした。空なんかを眺めて、しきりに耳の後ろあたりを掻いたりしている。私の私服には興味なし、ということか。

 つれないその態度に、出会って早々に私はムッとしてしまった。

「……ていうか、ねえちょっと、何その服。信じらんない。」

 ほとんど反射的に、私は憎まれ口を叩いていた。

「なんなの?セクシー過ぎでしょ。私を興奮させたいの?そんな大胆な恰好されたら、私がドキドキするのわかってるはずでしょ?せっかく楽しみにしてた映画なのに、これじゃ上映中も英子のことばっかり見ちゃうじゃない。どういうつもりなのよ?」

 英子が、ちらりとこちらを見た。

「……サンキュ。友香もその服、か、か、かわいいじゃんか……。制服だとクールな感じだから、印象違くてびっくりしたっつーか……。」

「え?あ、ありがと……。」

 なぜかわからないが、誉め言葉として受け止められたらしい。釈然としないけれど、お返しに褒めてもらったのでよしとしよう。

 よしとしよう。と思ったのだけど、だけどあまりよろしくない事態が起こった。

 私はその場から、動けなくなってしまったのだ。

 照れすぎて、動けなくなってしまった。

 かわいい。

 その一言が、私の気分を信じられないくらい高揚させたのだ。

 みるみるうちに顔が熱くなってゆく。頭から湯気が出そうだった。両手で顔を挟むようにして、きっと赤くなっているほっぺたを隠す。

「……ごめん英子、ちょっと待って。私今、すっごい感動してるかも。」

 でもどうにも隠しきれそうになくて、正直に私は言った。

「な、なんだよ。そんなにあたしとデー……じゃなくて、映画観に行くのが嬉しいのかよ?まあ、あたしも……」

「じゃなくって。」

「じゃないのかよ。」

「私、その、初めてだったから。親戚以外から『かわいい』って言われるの……。」

「えっ?」

「あ、わかってる、ちゃんとわかってるわよ。かわいいのは私じゃなくて服だって。でも勝手に顔がニヤけちゃうんだからしょうがないじゃない。ちょっと感慨にふけらせてよ。」

「ば、ばか、あたしは……。まーいいよ、ばか。」

 馬鹿などと直球な悪口を二回言われても、私のニヤニヤは止まらなかった。

 そして結局私は、そうやって頬をゆるませたまま、映画館へと赴いた。そんな私の様子が愉快だったのか、英子もずっと口元をほころばせていた。

 英子と笑いあいながら、町を並んで歩いている。それがなんだかやけに嬉しかった。私達は肩をぴったりとくっつけ、寄り添うようにして映画館に入った。

 タイプの全然違う女の子同士で、ビアン映画を観にいく笑顔の二人。他人からはひょっとして、デートに浮かれてる同性カップルに見えたかもしれない。

 でも、私達は親友なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ