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「ちょ、ちょっと待ってよ!まだ話は途中っていうか、本題に入ってないんだけど!」
「あん?なんだよ。」
ポケットに手を入れたまま、英子がウザそうに振り向く。
「そういうわけで、映画のチケット一枚余っちゃったから、土曜ヒマなら一緒に行かない?って、言おうとしてたんだけど……。」
「……。」
「私達親友なのに、一度もお休みの日に遊んだことないじゃない。だったら、ちょうどいい機会だから一緒にお出かけしたいなって思ったんだけど。行……かない感じかしら、この空気は。」
英子が、逆再生みたいに元の場所へ戻り、ストンと腰を下ろした。
「……行く。」
「あ、よかった。今日はなんだかご機嫌ななめだから、断られるかと思ったわ。」
「うっせーな、つーか、それが本題ならさっさとそう言えよ!なんなんだてめーは、人をモヤモヤさせたりムカムカさせたりしやがって!で、最終的にはワクワクさせやがって!あたしが情緒不安定みてーだろ!」
「……なんかわかんないけど、最終的にワクワクしてくれたなら何よりよ。」
こうして告白様子見計画第一弾は、一転して、英子との初めての休日お出かけと変更された。
そして土曜日。お出かけ当日。
家を出る数時間前。
私は鏡の前でお気に入りの服を着て、はやばやと準備を整えていた。
とっておきのフリルブラウスと、チェックのサスペンダースカート。ださい私の、せいいっぱいのおしゃれ着。
こういう機会でもなければ、なかなか袖を通せない服だ。心春と遊ぶときには着られない服だ。彼女は年中どこへ行くときもジャージなので、こっちもラフな格好じゃないと、心春だけ悪目立ちしてしまうのだ。
そういうわけで、おしゃれをした姿を友達に見せる機会に、私はちょっと浮足立っていた。髪もハーフアップなんかにしてみた。リップを塗ってみようかな、なんて思ったりもした。高校生になった記念に買ったはいいけど、まだ一度も使っていないピンクのカラーリップ。
でもさすがにそれはやり過ぎか。「気合入ってんなー」とか勘違いされるのも恥ずかしいし。でも……。
あれこれ楽しく迷っているうちに、時間はどんどん過ぎていった。
なんだか最初から、英子と映画を観るためにチケットを取ったような気分になっていた。




