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というあらましを、昼休み、英子に話した。
話を聞きながら彼女は、なんとも言えない微妙な表情になった。
「ちょっと。どういう気持ちなのよ?その顔は。」
「別に……。」
指摘すると、彼女はふんとそっぽを向いた。
「どんな気持ちにもなってねーよ。ただ、告白なんてリスキーじゃねえのって。そう思っただけ。」
言いながら、つまらなさそうにパンをかじる。
「うまくいかねー確率の方がどう考えたってたけーだろ。映画に誘えなかったのは、むしろラッキーなんじゃねーの。もうやめとけよ。」
今日は機嫌が悪いのか、口調がすこぶるぶっきらぼうだ。
ただ、言っていることは的を射ていた。
私がやろうとしていることは、確かに勝ち目の薄い賭けだった。でもそれは、言われるまでもなくわかっていたことだ。
「心配してくれてありがと。だけど、実際に告白をするのはずっと先の予定よ。それに、様子見の結果、あまりにもだめそうだったら中止するし。そういう見極めは得意なのよ。特に心春に関することならね。心配ご無用よ。」
「見極めが得意?どーだかな。」
英子が、食べ終わったパンの袋をクシャッと丸めた。それをスカートのポケットに突っ込む。
「ずいぶんトゲのある言い方するじゃないの。」
「だってお前、恋愛関係のセンサー全然鈍いじゃねーかよ。思春期とは思えねーくらい鈍感じゃんかよ。それで見極めは得意ーとか胸張られてもなぁって感じ。」
「う……。」
痛いところを突かれてしまった。
言われてみれば、確かにそうだ。
英子がガチ百合だということに、以前私はなかなか気づけなかった。真冬さんに片想いしていると気付けなかった。今から思えば、あんなに目からハート出しているような状態だったのに。
どうやら私の恋愛センサーは、色恋沙汰に無頓着な心春と長く一緒にいたせいで、ぽっきりアンテナが折れてしまっているらしい。あらためてそう考えると、自分の洞察力に多少自信がなくなってきた。
「なあ友香。あたしは前も言ったけど、真冬さんと恋人になりてーなんて思ってねーから。告ろうだなんて思ってねーから。」
「え?あ、うん……。」
「告らねーのは、絶対無理だからってのもあるけど、だいいちあっちにしたら迷惑じゃんかよ?眼中にない相手、それも毎日顔会わせる相手に、愛の告白されるなんてよ。こっちの自己満足にしかなんねーよ。考え直せって。」
「で、でも、やる前からあきらめるなんて……」
英子の説得に反論すると、彼女はチッと舌打ちをした。本当に機嫌が悪い。
「あーあー、わかったわかった。だったらもう友香の好きにすりゃいいじゃん。あたしにゃ関係ない話だしよ。」
まだお昼休みの途中なのに、英子が立ち上がった。




