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「ねえ。せっかく青春してるわけだし、ずっと前から思ってたこと言っていい?」
「なんだよその、『せっかく』の使い方。別にいいけどよ。なに?」
長い脚をくみ直して、英子が笑った。
「あのさ。」
「おー。」
「あ、一応断っておくけど……。今から超クサいセリフ言うけど、引かないでね。」
「いいから早く言えよ。」
「じゃ、言うけど……。」
「うん。」
「英子の恋って、すっごくきれいだよね。」
「……はっ?!」
英子の声が、裏返った。
それはそうだろう。急にこんなこと告げられたら、誰だってめんくらうに決まっている。でもこれは……これこそが、私がずっと伝えたいと思っていたことなのだ。
「ななな、なに言ってんだよ、はあ?!ば、ば、ばかじゃねーの?!」
「ごめんごめん。でも、本当に。本気の感想。」
照れながらも、私は続けた。
「なんだか、よこしまな心がないっていうか、ピュアでさ。だからなんていうか……。いいなー、って。」
「ぴ、ピュアって、いや、んなことないだろ?!」
「そんなことあるわよ。例えば、あんたさっきも言ってたじゃない、『名前を呼んでほしい』って。高校生でそんな無垢な恋、なかなかないよ。だから私、あんたを応援したくなるの。」
「ちょ、ストップ、ストップ!お前、ばかにしてる……わけじゃねーことは知ってっけど、そんな奴じゃねーこと知ってっけど、でも言ってること恥ずかしすぎだろ!青春すぎるだろ、いくらなんでも!」
「あー、うん……。なんだろ、ちょっとエモい雰囲気に感化されちゃったかも。まあとにかく、あんたがうらやましいって伝えたかったの。」
「う、うらやましい?」
「そう、うらやましいの。純粋で、まっすぐで、ピュアで、そんな英子の恋がうらやましいの。私の心春に対する感情は、肉欲の比率が高いから。」
「に、肉欲って……。耳で聞いたの初めてだわ。書き言葉だろ……。」
私は英子がうらやましかった。
私は英子と違って、ちっともピュアじゃない。不純な女だ。友達に劣情をいだく女だ。
私の初恋は、心春の太ももを見た瞬間に始まった。
本当はそれがずっと苦しかった。引け目を感じていた。この片想いは、告白する価値もない。性欲まみれの汚い恋だ。
だから私は、英子のきれいな恋に憧れてしまう。髪についた花びらを宝物みたいに握りしめる、彼女のひそやかな純情に。
そんな無垢な恋を、本当は私もしてみたかった。
その代償行為として、私はこんなにも彼女に肩入れしているんだろう、きっと。
それを彼女に告げないまま親友になるのは、なんだかフェアじゃない。ずるい。そんな気がしたのだ。
「だから、自分が汚い分あんたの応援……」
「ま、待った待った待った……!おい友香、待てってば!」
私の言葉を、英子が強引にさえぎった。




