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「ね、じゃあ、これからは私が言ってあげようか。」
「は?」
「だから、あんたの名前。真冬さんの代わりに、私が呼んであげるって言ったのよ、英子さん。」
と私が言った途端、彼女の頬がさっとピンク色に染まった。
「……!」
そしてコップをテーブルに置いて、手で口元を隠し、プイと顔をそらした。見え見えの照れ隠しだ。ピュアガールめ。ていうか、誰でもいいのか。名前で呼んでくれるなら。
「ちょ、お前、目ぇみつめながら名前呼ぶのは反則っつーか……。」
「反則?何言ってんの。」
「あーもう、うっせ!つーか呼び捨てでいいよ、呼び捨てで!『さん』付けんな!うちら親友なんだからよ!」
「ああ、そう……って、親友?私達親友だったの?初耳なんだけど。まだ友達歴一カ月にも満たないのに、気が早いんじゃない?」
「ばーか。こういうのは、時間の長さなんてかんけーねーんだよ。わかったか、……と、と、友香?」
まだ赤いまんまの顔で、周野……じゃなくて、英子が私の名前を呼んだ。
「ふふっ、わかったわかった。じゃあ、今から私達は親友同士なわけね。これからよろしく、親友の英子さん。」
「だ、だから、呼び捨てでいいってえの……。」
彼女はほてった自分の顔に、手でぱたぱたとあおいで風を送った。いつまで照れてるんだ。
けれどかく言う私も、柄にもないセリフを言ったせいで、耳たぶのあたりが熱くなっていた。
どうもいけない。やっぱりこの人といると、恥ずかしいことばっかり口にしてしまう。
でもそれは、はっきり言って周野……英子が悪い。英子のせいだ。
英子がばんばん恥ずかしいことを口走るから、つられて私も赤面もののセリフを返してしまうのだ。心春にさえ見せなかった心の青臭い部分を、彼女にたくさん見せてしまうのだ。
だけどそれは、不思議と心地がよかった。どうしてだろう。
恥ずかしいセリフを言って、はにかんだ顔を二人で見合わせて笑う。それはなんだか、体がふわふわ浮いてしまいそうな高揚感があった。
だから英子と二人きりの時間は、すごく楽しくて、幸せだった。




