表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
47/63

47

 私が心の中で必死にお祈りしていると、真冬さんがスッと動いた。

 そして周野の肩を、ねぎらうようにポンと軽く叩いた。

「周野さん、あなたよくわかっているじゃない。どうやら競技ジグソーに関しては、戸成さんよりこの子の方が常識人のようね。私が負ける前提の話をしたところで、時間の無駄というものよ。ねえ、周野さん?」

 ぱああっと、曇っていた周野の表情が晴れた。

 やった。

 私は心の中で、ガッツポーズをした。

 周野のささやかな夢が、叶った瞬間だった。

 真冬さんにとっては、きっとなんでもないことなんだろう。でも周野にとって、きっと今の出来事は、とっても最高な瞬間だったに違いない。

 挨拶ぐらいしかできなかった、憧れの女性。その人が、自分の言葉にリアクションして、自分の体に触ってくれたのだ。きっと飛び上がるくらい嬉しいはずだ。実際彼女は、ぽうっとした顔で佇んでいた。余韻を噛みしめているのだろう。

 よかったね、周野。本当によかった。

「でもいいわ。そこまで言うのなら、負けたときには心春の好きな色に髪を染めてあげる。そんな事態はありえないけれどね?」

「あたしは別になんも言ってないけど……。ま、とにかく盛り上がってきた!さっそくやろーじゃんか!」

 私と周野の感慨を無視して、話は本筋へと返っていった。みんながバタバタと、ジグソーバトルの準備を始める。

 私は周野の隣に行き、ちょんと手の甲を指でつついた。ぼんやり呆けていた彼女は、ハッとこちらを見た。

「やったね。頑張った甲斐あったわね。」

 小声でそう言うと、彼女の瞳が潤みだした。

(え、泣いちゃうの?)

 びっくりしたけど、周野はぎりぎりのところで耐えて、涙はこぼれなかった。

 でもこれだけのことでウルッとくるなんて、どれだけピュアなんだ。

 そう思ったけど、言えなかった。

 私もうっかり、もらい泣きしそうになったからだ。


 ジグソーバトルは、僅差で真冬さんが勝った。

 でもそんなことはどうでもよかった。

 試合前に、すでに私達は勝利を得ていたからだ。他の人はやっていたことさえ知らない、とてもささやかな戦いだったけれど。

 でもそれは、周野英子にとって、きらきら輝く宝石みたいな勝利なのだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ