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私が心の中で必死にお祈りしていると、真冬さんがスッと動いた。
そして周野の肩を、ねぎらうようにポンと軽く叩いた。
「周野さん、あなたよくわかっているじゃない。どうやら競技ジグソーに関しては、戸成さんよりこの子の方が常識人のようね。私が負ける前提の話をしたところで、時間の無駄というものよ。ねえ、周野さん?」
ぱああっと、曇っていた周野の表情が晴れた。
やった。
私は心の中で、ガッツポーズをした。
周野のささやかな夢が、叶った瞬間だった。
真冬さんにとっては、きっとなんでもないことなんだろう。でも周野にとって、きっと今の出来事は、とっても最高な瞬間だったに違いない。
挨拶ぐらいしかできなかった、憧れの女性。その人が、自分の言葉にリアクションして、自分の体に触ってくれたのだ。きっと飛び上がるくらい嬉しいはずだ。実際彼女は、ぽうっとした顔で佇んでいた。余韻を噛みしめているのだろう。
よかったね、周野。本当によかった。
「でもいいわ。そこまで言うのなら、負けたときには心春の好きな色に髪を染めてあげる。そんな事態はありえないけれどね?」
「あたしは別になんも言ってないけど……。ま、とにかく盛り上がってきた!さっそくやろーじゃんか!」
私と周野の感慨を無視して、話は本筋へと返っていった。みんながバタバタと、ジグソーバトルの準備を始める。
私は周野の隣に行き、ちょんと手の甲を指でつついた。ぼんやり呆けていた彼女は、ハッとこちらを見た。
「やったね。頑張った甲斐あったわね。」
小声でそう言うと、彼女の瞳が潤みだした。
(え、泣いちゃうの?)
びっくりしたけど、周野はぎりぎりのところで耐えて、涙はこぼれなかった。
でもこれだけのことでウルッとくるなんて、どれだけピュアなんだ。
そう思ったけど、言えなかった。
私もうっかり、もらい泣きしそうになったからだ。
ジグソーバトルは、僅差で真冬さんが勝った。
でもそんなことはどうでもよかった。
試合前に、すでに私達は勝利を得ていたからだ。他の人はやっていたことさえ知らない、とてもささやかな戦いだったけれど。
でもそれは、周野英子にとって、きらきら輝く宝石みたいな勝利なのだ。




