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ゴールデンウイークを挟んだせいもあって、なかなか計画は進展しなかった。
だけどグミの日から二週間後の放課後、ようやくチャンスがやってきた。
ついに、心春と真冬さんがガチのジグソーバトルすることになったのだ。
心春はいまだに、大幅なハンデをつけてもらって対戦していた。それでも油断しない真冬さんは滅茶苦茶強くて、最初のバトル以降は圧勝していた。でもここ最近、心春は急速に実力をつけてきた。それでふと、「次真冬とやったら勝てんじゃねーのって気がする」と口から漏らし、じゃあやってやろうじゃないって話になったのだ。
真冬さんは、「私に勝てるだなんて、そこまで大言壮語を吐くのなら、負けたら罰ゲーム」的なことを言った。
しめた。そう私は思った。周りの人達が入っていきやすい話題だからだ。願ってもない展開だった。
「この勝負に私が勝ったら、あなたには……そうね、その黒髪を切っていただこうかしら?」
自分のさらさらの髪をかき上げなら、真冬さんは高らかに宣言した。
「髪を切る?!それってつまり……!」
「つまりー!おすすめの美容院紹介してあげるってことだよねっ、真冬ちゃん!」
「その通り。」
双葉の言葉に、真冬さんが鷹揚に頷いた。
「以前から思っていたの、心春のヘアスタイル、あまりにも雑でもったいないって。あなたが負けたら、私が予約を入れているお店へ代わりに行ってもらうことにするわ。いかがかしら?」
「なんてひどいことを!いくらなんでも、そんなペナルティはやりすぎよ!」
空気を読んだ私は、話を盛り上げるため、心にもない抗議をした。私がこうやって合いの手(?)を入れるのも、すっかり部ではおなじみになった。部長たちも、「今日も盛り上げ役ごくろうさま」的な目で見てくれている。
「無茶を言わないで、真冬さん!心春の髪は昔からずっと、近所のショボい床屋で切ってもらっているのよ?それを勝手に変えようだなんて!断った方がいいわ心春、こんな横暴な条件を呑むことなんてない!」
「ふーん、いいじゃん。面白くなってきたんじゃね?」
私の親友が、ニヤリと不敵に笑った。なので私は、あっけにとられた風な顔をしてみせた。
「心春?!何を言って……」
「確かにあたしゃ、今までずっと床屋派だったよ?美容院に行くのが、なんかちょっと気取ってるみたいで抵抗あったからさー。でも、床屋のオヤジの『え、高校生になってもまだうち来んの?』って視線も辛くなってきたところ!あんたの提案、こっちも望むところだってぇの!」
パン、と乾いた音が響いた。心春が、自分の手のひらに拳を叩きつけた音だ。
「オッケー、真冬!この髪切りデスマッチ、正々堂々と受けて立とーじゃんか!」
「決まったわね。じゃあ……」
「ちょ、ちょっと待って!」
シグソーバトルに入る流れを、私はやや無理やり気味に止めた。
バトルはしてほしいけど、でももうちょっと、髪型についてのトークを二人に続けてほしい。そう思ったのだ。
この話題は、周野が入りやすい話題だ。止めちゃいけない。そう判断したのだ。
周野のパッと見の特徴はやっぱり、金色に染めた髪だ。
だからこの髪関連のトークは、きっと突破口になる。彼女が、会話に入ってこれるきっかけになる。と、不意に思いついたのだ。




