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 放課後。

 部活の時間になった。この時間を待ちわびるなんて初めてだった。

 その日の部活は、集中力アップのトレーニングを最初にやった。みんなでわいわいトークをしつつ、ジグソーパズルを完成させる、という強化トレーニングだ。

 私と周野は、とりあえず普通にトレーニングに参加した。そして、心春と真冬さんがバトルをする流れになるのをただ待った。



「んー、なんかとなんかを二つ同時にこなすって、あたし苦手なんだよなー。こーゆーの、マルゲリータっていうんだっけ?」

「おなか減ってるの?」

 パズルをいじりながら、心春がピザの名称をぼやいた。

「マルチタスクね。マルゲリータじゃなくて。」

「あー、それそれ。惜しかった。『マ』と『ル』と文字数は合ってた。ほぼ正解。」

「自己採点甘くない?ていうか、そんな御大層なものでもないと思うけど。マルチタスクっていうか、ながら作業でしょ。」

「もー、甘く見ちゃだめよ戸成さーん。これも立派なトレーニングなんだからー。」

「あ、すみません。」

 私を叱りながらも、部長はシュパパパとパズルを完成させてゆく。さすがだ。さすがだけど、人を叱責しながらすごい勢いでパズルしてるのは、ちょっと奇妙な光景ではある。

「そうだよ、戸成くん。上級者はみんな、バトル中にガンガン話しかけてくるからね。こっちの気を散らそうとして、煽ったり挑発したり。それに耐性をつけるための練習でもあるのさ。」

「なるほど。……いやなるほどっていうか、競技のルール改定するべきなのでは。」

 なっちゃん先輩の説明に一瞬納得したあと、首をひねった。マナー悪すぎじゃないですか、ジグソーバトラーのみなさん。

「わー、友香ちゃんったら野暮天さんだー。」

「友香ちゃん、それは言いっこなしだよー。」

「言いっこなしなの?なんで?」

 外野姉妹が、こっちの意見にそろって反発した。私は野暮天さんなのか。「こちとらそれが楽しくてバトルやってんだい」くらいの感覚なのかもしれない。

「まあ、でも……。戸成くんの言い分も、少しわかるかな?ぼくも初めてバトル中に挑発をされたときは、同じようにお姉ちゃんに……あ。」

 先輩が、「お姉ちゃん」と言った途端に慌てて口元を押さえた。と同時に、部長が「あらー」と嬉しそうにつぶやく。

「じゃなかった、千秋さんに……。」

「んー?別にいーじゃないすか、『お姉ちゃん』で。普段はそう呼んでるんでしょ?そーんな恥ずかしがることでもないじゃないすか。」

 からかう口調ではなく、普通に疑問みたいなトーンで心春が言った。

「ば、ふ、普段そう呼んでるわけないだろ?!子供の頃だよ、子供の頃!ついうっかり言っちゃったんだよ、パズルしながらだから!」

 なっちゃん先輩が声を荒げると、部長がしゅんと肩を落とした。

「そうなのよー。なっちゃんってばここ数年、すっかりお姉ちゃんって呼んでくれなくなっちゃって。寂しいわー。まーちゃんは、子供の頃から『千秋さん』だしー。」

「私が呼んだらややこしいでしょう、本当の姉がいるんだもの。それより姉さん、手が止まっているわよ?」

「っと、いけないいけない。」

 真冬さんに指摘されて、なっちゃん先輩がパズルを再開する。

「なんだか八王子姉妹って、真冬さんの方がお姉さんっぽいわよね。妹らしくないというか、しっかりしてるっていうか。」

「先に産まれたからしっかり者、というわけでもないでしょう。戸成さん、何か姉妹に対して幻想を抱いているんじゃなくて?」

「そうかもしれないけど……。」

「ん。いやでも確かに、こいつは昔っから妹みに欠ける奴だったよ、戸成くん。」

「いもうとみ?」

 旨み、弱み、人情み、とかのたぐいだろうか。妹み。いくら学園の王子だからって、変な日本語を勝手に作らないでほしい。

「そうなんですか?」

「ああそうさ。生意気だし、意地っ張りだし、ぼくの言うことまるで聞かないし。」

「いや、なっちゃん先輩さー。むしろそれ、妹みーあふれまくってね?やっぱさ、なっちゃんの方に姉みが足りないんと違う?」

「いいや、違うね。姫川は何もわかっちゃいない。問題があるのはこいつの方さ。入学前に『高校ではお姉様と呼ぶこと』って厳重に言い聞かせていたのに、まるで守らないしね。」

「それは私が悪いのかしら?」

 まあなんだかんだ言って、二人は仲のいい姉妹みたいだ。

「なんだかいいわね。私一人っ子だから、姉とか妹とかちょっと憧れるな。あんたは兄弟とかいるの?」

「……え?あ、わりい、聞いてなかった。」

 周野に話を振ると、ぼんやりした答えが返ってきた。心春以上にマルチタスクが苦手そうだった。

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