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連れていかれた場所は、日の差さない校舎裏だった。不良の呼び出しの定番スポットだ。
ちょうど腰を掛けられるくらいのコンクリートの段差があり、周野はそこに直で座った。制服が汚れるとかは、気にしないたちらしかった。私は彼女の横に、ハンカチを敷いて座った。
「……。」
「……。」
話がある。そう言ったくせに、彼女はうつむいたっきり沈黙した。
まあ確かに、簡単には口にしにくい話題だ。こっちから切り出した方がよさそう、そう私は判断した。
「……別に、言いふらしたりとかしないから。あんたの好きな人。」
先回りしてそう言うと、周野はチラリとこっちを見た。特に表情は変わっていなかった。
「んなこと、心配してねーし。」
それだけつぶやいて、また顔を伏せた。呼び出したのは、違う要件だったらしい。じゃあなんだろう。
再び、沈黙。
「……ねえ、ひょっとしてだけど。そっちも昨日、なんとなく勘づいちゃった?私の好きな人が、その……。」
「そんなん別に、入学式んときから知ってたっての……。校門前で髪の匂い嗅いでたじゃんか、お前。あれでまあ、そうなんじゃねーの、って。」
「あ、そ、そうなんだ……。」
意外な返答に、私の方が動揺した。
誰にも気付かれないようにしよう。そう胸に秘めていた気持ちを、まさか一カ月前から勘付かれていたなんて。顔が赤くなってゆくのが、自分でわかった。メガネを外し、無意味に鼻の横をごしごしこすったりした。
「てかよ、てめーが昨日まで気付かなかったのが鈍いっつーか……。いろいろこっちも、話したいことがよ……。」
顔を手で覆うようにして、ごにょごにょと周野が言った。らしくない、歯切れの悪い口調だった。意味もよくわからなかった。
「え、なに?なんて言ったの?」
「……ああ、もう!」
自身に苛立ったみたいに、周野がばちんと自分の太ももを叩いた。
そして顔を上げ、キッとこちらをにらんだ。
「めんどくせー、もう考えんのやめた!いいか戸成、ハッキリ言うぜ!」
「な、なによ……。」




