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昼休み。
私はいつものように、心春と一緒にお弁当を食べていた。
「友香ー、から揚げ一個いらん?あたしお腹いっぱいでさー。」
「ごめん、私もいらないわ。でも珍しいわね、あんたが食欲ないなんて。」
「や、むしろ逆に、食欲あったせいっつーか。実は間食しちゃってさー。体育終わりに腹減りすぎて、バナナとガム食べちゃったんよ。」
「キモい食べ合わせ。」
「でも、知ってるかー?ミントガム噛みながらバナナ食ったら、なんと口ン中で、ミント味のバナナになんの。すごくね?」
「『なんと』じゃないわよ、妥当妥当。で、おいしいの?それ。」
「超まずいよ。」
「うん……。」
でしょうね、以外の感想が湧いてこない。
「だからまあ、正直おすすめはできないかなー。やめときな?」
「やらないわよ……え、私、やりたそうに見えた?心外すぎるんだけど。」
「あ、そう?」
「そうよ。是非どうぞって勧められてもやらないわよ。そんなアホな小学生みたいな実験。てゆうか、絶対まずいって普通わかるでしょ。なんでそんなことしちゃったわけ?」
「ね。やんなきゃよかった。」
「素直なのはいいけど……ん?」
不意に、机の横から影が差した。
振り向くと、周野がムスッとした顔で突っ立っていた。
「お、周野、いいところに来たじゃん。から揚げ一個余ってっけど食べるー?」
いきなり現れた周野に、心春がフランクに話しかけた。普段ほとんど接点なくても、気兼ねしないのが心春のいいところだ。
でもそんな彼女の呼びかけを無視するように、周野は私を見た。
「何か用?」
食べ終わったお弁当箱を片付けながら、聞いた。
「ちょっと話あんだけど。来いよ。」
周野が言った。不愛想に、怒ったみたいな口調で。そして、扉の方を親指で指さした。
私は促されるまま席から立った。
昨日の件だということは、もう察しがついていた。
でも、彼女が私に何を求めているのかはわからなかった。口止め?それとも……。
周野は真剣な表情をしていた。怖いくらいだった。
きっと事情を知らない人の目には、ヤンキーのターゲットにされた哀れなメガネ女、みたいな構図に見えるだろう。
「お、なになに、二人で内緒話かよー?あんたら最近仲いいよなー。」
心春が微笑ましげに言った。
心春はそういうけれど、別に私達は仲良くなんてない。落ちこぼれ組として、部活中ずっと隣にいるだけの間柄だ。
昨日はちょっといろいろ話したけど、普段はそんなに口も利かない。そもそも「ちょっと嫌なやつ」が第一印象だったわけだし。
だけど、近ごろは少し親近感をいだいていた。
当たり前だ。似たような境遇で、好きでもないジグソーを、ずっと机を並べていじってたわけだから。一カ月も。必然的に敵意も薄れるというものだ。
でもそんな微温的な関係は、たぶん今日でおしまいだろう。そんな予感がしていた。




