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 四月の終わり。

 少し春の遅い私の町で、ようやく桜が散り始めていた。

 私達は全員、ジグソー部に入った。すねたようにしていた周野英子も含めて。

 初日は逃げ出したなっちゃん先輩こと八王子夏生副部長も、部室に顔を見せるようになった。「千春さんと部活できるのは今年が最後」と、妹に説得されたらしかった。少し不安だったけど、でもやっぱり、心春との仲は深まりそうにない感じだった。心配は杞憂に終わりそうな気配がした。

 ちなみにジグソー部の顧問は、鬼山先生という、やけに厳しいことで有名な女性教諭だ。真冬さん目当てのナンパ男とかが入部してこなかったのは、たぶん彼女のおかげなのだろう。でも他のクラブも兼任していて、めったに部室に現れなかった。そのためだいぶ自由で気楽だった。

 何も問題ない高校生活。……のはずだった。

 でも私は、近ごろ少し憂鬱だった。

 あんなに楽しみにしていた朝の時間。心春との登校時間。それが、あんまり楽しく感じられなくなってきたのだ。

 はっきり言えば、息苦しかった。心春と二人っきりの時間が。



「……んでさー、パズリングの基本はフレームメイキングだって、部長言うんだよねー。いや、わかるよ?わかるけどさー、あくまで基本じゃん。律儀に守る必要ある?ってあたし思うわけよ。友香もそう思わん?」

「……まあ、うん。どうかな。」

「そりゃ実際、フレームメイキングの特訓したら、ジャストピクチャの時間は短縮したよ?でも、ゆーて一、二秒じゃん。だったらさー、あたしの得意なストレートツリーの練習した方が有意義なんじゃないのーって。それか、まだマスターしてないファイブフィンガーのピスピクとかさー。ねー、あたし間違ってるかなー?」

「さあ……。私初心者だから、ちょっとわかんないかな……。」

 入部してからというもの、心春はずっとこんな感じだった。

 あっという間に彼女は、競技ジグソーに夢中になっていった。居残り特訓はもちろんのこと、トレーニング用パズルを借りて、家で自主トレまでしているらしかった。口を開けばそのことばかりになった。

 私は正直、ついていけなかった。

 部室内ではどうにか、空気を壊さないよう会話に加わっていた。でも依然として、競技ジグソーに対する興味も熱意もまるで持てなかった。

 心春への執着、友達としての義務感。それだけのために部活をやっていた。

 だから、学校以外のところで競技ジグソーの話を聞くのはウンザリだった。もはや苦痛だった。ジグソーの話題に比べたら、忍者の話の方がまだ興味を持てた。

 でも何より辛いのは、心春が私と話しているとき、物足りなさそうな顔をすることだった。

 それはそうだろう。無理もない。競技ジグソーに無知な私ときたら、気の抜けた当たり障りのない返答しかできないのだから。

 だったらじゃあ、完璧な受け答えができるようになればいい。競技ジグソーについて勉強すればいい。そうは思うのだけど、実行には移せなかった。面倒でしょうがなかった。ジグソーパズルなんて、見るのも嫌になっていた。


……ていうか友達なんだから、私が興味ないことに気付いてよ。もっと別な話してよ。


 そんな勝手なことを思うようになっていた。最初に興味あるよう装ったのは私なのに。

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