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 私は心春が好き。

 そのことを自覚したのは十二才のときだ。

 初恋と呼ぶには、よこしまな感情だった。



 小学校の卒業式が終わって、中学の入学を待っている春休み。

 その日私は、服を持って心春の部屋に行った。

 中学の制服が届いたので、お互いに着て見せ合いっこしよう。そういう話になったのだ。

「わーなんか、スカート履くの緊張する。今までずっとズボンだったからさー。」

 ハンガーに吊るされた制服を眺めながら、心春が言った。

「あれ、スカート持ってなかったっけ?何回か目にした記憶あるけど。」

「あることはあるけど、ほとんど着なかったじゃん。小学校入りたてんときの話だし。もっと履きたいなーとは思ってたけどさ。」

「あ、そうなの?好きじゃないからあんまり履かないんだと思ってた。」

「ちゃうちゃう。なーんかさ、履くとみんなに冷やかされる気ぃしてさー。自意識過剰かもだけどさー。消極的なズボン派っつーの?その分なんか、逆にスカートに対する憧れっちゅーかが膨らんじゃったんだよねー。」

「憧れ?」

「だからさー。あたしもスカート履いたら、たちまちジャジャーンといい女に変身できる、的な?あ、これ憧れじゃなく妄想かー。ははっ。」

 鼻の頭を掻いて、心春が苦笑した。

 彼女がそういうことを考えていると、そのとき私は初めて知った。心春、いい女になりたいって気持ちがあったんだ。興味ないかと思ってた。そんな驚きがあった。

 じゃあ久しぶりにスカート解禁する今日は、彼女にとって、わりと大事な日ってわけか。だったらうんと褒めてあげなくちゃ。私はそんな、友達としての使命感にかられた。

 そして、お互い背中を向けてセーラー服に着替えた。

 私の制服はぶかぶかだった。成長を見据えて、大きめに作られていたのだ。たぶん私いま、母親の服を着てみた子供みたいになってるな。そう思った。

「なんだか、鏡を見なくても微妙ってわかるな……。心春、そっちはどう?」

「あー、うん……。いちおー着てみた、けど……。」

「どれ?」

 振り返った。

 瞬間、息を飲んだ。

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