23
部長 「それじゃーあー……レッツ・ジグソー!」
心春 「いくら素人とチャンプっつっても、このハンデ差なら勝て……うえっ?!」
真冬 「無知なあなたに見せてあげるわ、本物のジグソーパズルというものを!」
双子 「わーい!真冬ちゃんやっぱりすごーい!はやーい!」
私 「なんて素早い手の動きなの?!みるみるうちにパズルが組みあがっていく!あ、あまりにも圧倒的だわ。」
心春 「マジか、全然レベルが違うじゃん!もう外枠できてるし!くそー、こっちはいくら急いでもだめだ、ピースがはまんない!取るやつ取るやつ全部違うよ!どうすりゃいいのさ?!」
部長 「さすがまーちゃんねー。プロ顔負けのパズリングだわ。やっぱり、もっとハンデが必要だったかも。……あら?」
双子 「あれー、心春ちゃんが動かなくなっちゃったよ?諦めちゃった?気持ちはわかるけど、よくないよー。」
私 「どうしたの心春!パズルピースをじっと眺めても、なんにもならないわよ!手を動かして!」
真冬 「もう戦意喪失かしら?口ほどにもないわね。いいわ、こうなったら私は自分のベストタイムを目指すだけ。あなたはそこで、高みに昇り詰める私のパズリングに見惚れていなさい。」
心春 「……。」
私 「ちょっと、本当に諦めちゃったの?!あんたらしくないじゃない!そんな、そんな心春なんて見たくない!」
心春 「……なーるほど、関節技はパズル、ね。やっと意味がわかったよ、じーちゃん!」
双子 「あ、心春ちゃんが動いた!」
私 「心春!」
真冬 「試合を捨てたわけではなかったのね、でももう遅い!今になって慌てたところで、とうてい私のパズルには……えっ?!」
双子 「なんか、心春ちゃん急にすごいよ?!急に速い!どんどん真冬ちゃんに追いついてく!」
部長 「ううん、速いってゆうか、正確。手に取ったピースが、絶対に『当たり』のピース。次に何をはめたらいいのか、あらかじめわかってる感じ?へーえ、これは……。」
真冬 「外枠を作らず、まっすぐ順番にピースを繋げていく?!あ、ありえないわ、そんなパズリング!ありえない!」
心春 「見えるよ、じーちゃん!こーゆーことなんだね!ピースは人間の関節とおんなじ、全部繋がってる!」
部長 「……ふーん、今年の一年はおもしろいわねー?あら、まーちゃんのリズムが完全に崩れちゃった。格下に追いつめられるとパニックになるって弱点、克服できてないのねー。」
真冬 「くっ……!」
心春 「向こうのペースが落ちた!よし、いける、いけるよ!」
双子 「うそ、真冬ちゃんが負けちゃう?!」
真冬 「私が素人に負ける……なんて……あるわけがないでしょう!」
心春 「っ?!なに、急にじーちゃんが本気で仕掛けるときみたいな殺気が?!」
私 「何あれ?!真冬さんの手の動きが、まるで円を描くように!」
双子 「で、出たー!あの技は!」
部長 「前大会を制したまーちゃんの得意技、人呼んで『エンゼル・ハイロウ』!」
心春 「うわーっ!」
私 「心春ー!」
部長 「そこまでー!勝者、八王子真冬ー!」
心春 「逆転……。一発で……。」
双子 「やったー真冬ちゃんの勝ちー!やっぱりすごいねー!」
真冬 「なんにも……。」
双子 「え?」
真冬 「何もすごくないわ、こんな結末は屈辱でしかない!一回もジグソーバトルをしたことがない相手に、ぎりぎりまで追いつめられるだなんて!この私が!」
私 「ちょっと真冬さん!勝った方がそんな言い方したら、負けた側の立場が……」
真冬 「見ていただけの人は黙ってなさい。いい、心春さん。次戦うときは、今度こそ圧倒的な差で屈服させてあげる。楽しみにしてらっしゃい!」
私 「別に心春と私は、入部するなんて一言も……」
心春 「え……また戦ってくれんの?超嬉しー!楽しかったけど、なんかキレてっからこれっきりかなーって思ったのに!よっしゃ!」
私 「心春?!」
心春 「でもめちゃくちゃ悔しいから、いつかぜってーあたしが勝つかんねー!楽しみにしといて!」
真冬 「あなた……。ふふっ、面白い娘。いいわ、何度でもかかってらっしゃい。何度でも打ち負かしてあげるから。」
心春 「あ、あと、さっきはごめんなー?やっぱ、関節技が得意だからってなんとかなるほど、競技ジグソーって甘くないっぽいなー?あたし、なーんもわかってなかったよ。」
真冬 「いいえ……。あなたは紛れもなく、驚異の新人だったわ。格闘技でもなんでも、全ての物事は、競技ジグソーの道へと繋がっているのね。私の認識こそ甘かったわ。強かったわよ、あなた。」
心春 「うん、真冬さんも……」
真冬 「さん、はいらないわ。」
心春 「は?」
真冬 「呼び捨てで構わない、と言ったのよ。心春。」
心春 「あはっ……。おっけー真冬、よろしくー!」
と、こうして。
ジグソーパズルを巡る熱いバトルは、感動的な握手で幕を閉じた。




