表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/32

16

 完成させる速さを競う競技ジグソーパズルは、私達の市オリジナルのスポーツだ。十年くらい前に、地域振興の一環として考案された。

 市はどうにかはやらせよう、定着させようと必死になった。しかし(というかやはりというか)、まったくと言っていいくらい流行らなかった。手を出すのは、ごく一部の変わり者だけだった。

 その変わり者の巣窟であろう競技ジグソー部に、心春と私は向かった。

 私がついていったのは、当然心春と離れたくなかったからだ。競技ジグソー自体には、一ミリも興味を持ってなかった。



「こんにちはー、見学したいんですけどー。」

 部室のドアを開けて、心春が言った。

 中には、八王子真冬とオマケABC……改め、周野英子と外野姉妹がすでにいた。八王子夏生はいなかった。その代わり、三つ編みおさげで丸メガネの三年生がいた。

 三つ編み先輩は、両方の手のひらを合わせてにこやかに笑った。

「あらまあ、今日はなんだか大にぎわいねー?おいでおいで、歓迎するわー。」

 のんびりした声で、先輩が言った。

 優しそうな人だなと、私はホッとした。部の内容に興味がないうえ、先輩が嫌な人ではたまったものじゃない。とても耐え切れないだろう。この人なら大丈夫そうだ。

「し、失礼しまーす。」

 私は軽く会釈して、心春と部屋の中に入った。

「へえ?意外な展開ね。」

 八王子真冬がこちらを一瞥して、軽く肩をすくめた。

「社交辞令のつもりで誘ったのに、まさか本当に来るなんてね。部に誘われたっていうの、作り話だったんでしょう?」

「別に来たっていいじゃん。先輩かんけーなしに興味あったんだよ。つーか気付いてたんかよ、作り話って。」

「まあね。」

 いたずらっぽく真冬が微笑した。

 彼女は、脚を組んで椅子に座り、片手で頬杖を突き、先輩よりも偉そうだった。だけどその尊大なポーズが、やけにしっくりきていた。大げさに言えば、玉座に座るクイーンのような風格があった。彼女が首を傾げるたび、長く美しい髪がさらさらと揺れた。

 そしてやっぱり彼女は、部の勧誘が嘘だと知っていた。ということは、今朝のあれは、推測通り心春を助けるためだったのだろう。

「高校から競技ジグソーを始めたいだなんて、少し変わってるわね。それともあなた、経験者だったの?大会で見かけたことがないのだけれど。」

「きっと真冬ちゃんに会いたくなったんだよー!」

「またファンが増えたね、わーい!」

 双子が、真冬の両肩にひっつきながら言った。

「うえっ?や、その、そーゆーわけでもないけどさ……?なんつーか、高校で新しいこと始めるのもいっかなーって?」

 双子のセリフに反応して、心春が目線をそらした。何かごまかしている顔だ。

 なるほどそうか、双子の言っていることは図星か。

 どうやら心春は、美しい同級生に興味を覚えて、この部に入る気になったらしい。その興味が、彼女個人に対してのものか、「プリンスの妹」としてのものなのかは不明だけど。

「……。」

 壁際にいる周野英子が、スカートのポケットに手を入れてそっぽを向いた。「けっ」という感じで。心春に対する反感は、まだ収まっていないようだった。

 彼女はまだ入学二日目だというのに、制服のタイを外して着崩していて、ガラが悪かった。金髪もいわゆるプリン頭になっており、「きちんとするのダセーし」的な意識が見て取れた。

 ただ改めて観察すると、ルックスはわりと私の好みだった。

 目付きは鋭く、顔立ちはシャープ。背は高くてスタイルがよく、ネコ科の肉食獣のような雰囲気があった。手を出したら噛みついてきそうな気配含めて。

 それでも、仲よくなりたいとは思わなかった。ヤンキーっぽい娘とは正直、あんまり話したくなかった。

 そもそもあっちも、私達と仲よくしようって気は全然なさそうだった。きっとこの部に入っても、彼女と友達になることはないんだろうな。そんな予感がした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ