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よかった。たぶんこれで済んだのは、入学二日目の事件だからだろう。なんだかんだで、実物のプリンス様に会ったのは、みんな昨日が初めてなのだ。いわば全員がにわかファンで、本気の恋心を抱いている人はさすがにいなかったのだろう。
私はほっと安堵のため息をついた。
結果的に八王子真冬の詰問が、全てプラスに働いたわけだ。ブラコンなのかなんなのか知らないけれど、心春につっかかっていった彼女に内心感謝した。
「それにしても、『部内恋愛しない』って言っていたのに、わざわざ自分から女子を部に誘うなんて……。きっとあなたよほど、好みのタイプから外れていたのね?おかわいそうに。」
「……はあ?」
かわいそうとまで言われて、さすがに心春もムッとしたようだった。
でも私は、密かに八王子真冬に喝采を送っていた。
そのセリフがだめ押しとなり、完全にみんなの興味が離れていったからだ。緊張していた空気は弛緩し、それぞれ勝手なおしゃべりを始めていた。
でも当の心春にとっては、危機を脱したなんて意識はないだろう。兄につきまとわれた次は妹になじられ、理不尽極まりないと感じているはずだ。
実際彼女は、片頬をぴくぴくさせ、だいぶムカついているのがはた目にもわかった。
更なるトラブルを防ぐため、今度こそ私は立ち上がった。
しかし私が行く前に、心春は口を開いた。
「つーかあんたさぁ、八王子さんさぁ、なーんでさっきからそんな、ちょっと上からな感じなん?はっきり言ってうざいっつーの。にーちゃんがなんぼ有名人だからってさあ、あんたまで偉いってわけじゃないんだよっ。顔がいい分性格悪いんじゃないのっ?」
「はっ?!」
と言ったのは、八王子真冬ではなく、後ろのオマケAだった。金髪で背が高く、不良少女っぽくて、怒ると迫力があった。




