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いきなり本題に入った真冬嬢に、心春が実に心のこもった「はああああっ?!」を返した。馬鹿言ってんじゃないよあんたクルクルパーか、という心の叫びがこもったような。
あ、よかった、ベストなリアクションだ。そう私は思った。
心春と先輩は、今はまだ甘酸っぱい雰囲気とはほど遠い。
その事実を知ってもらえば、みんなの敵意も収まるはずだ。今の「はあああっ?!」には、それを信じさせる力があった。
「あら、違うの?たった今、仲良く手をつないで登校してきたばかり。そう聞いたのだけれど。」
「はあ?はあ?はあああっ?!なんでそーなんの?手ぇなんてつないでないっての!」
「でも、一緒に登校してきたのは本当なのね?おかしいわね。あまりあの人は、一人の女の子とそういう真似はしないはずなのに。」
「だから、それはただ……!ただ……、あの、ほら、あのー、あれだよ。ぶ、部活の勧誘?競技ジグソー部に入んないかーていう。ほらだって、副部長なんでしょ、あの先輩。」
心春が、あごの下をせわしなく引っ掻きながら言った。
さっきまでと違い、今度は何かをごまかしているようだった。
きっと、昨日見た先輩の秘密とやらに関係しているのだろう。正直に答えると、その秘密をばらすことになってしまうのだろう。気を使っているのだ。
そのごまかしに気付かなかったのか、八王子真冬はその答えを聞いて「あははっ。」と高らかに笑った。心春の言い分を、どうやら真に受けたらしかった。
「部の勧誘?ああ、そうなの。どうせそんなことだろうと思った。やれやれ、とんだ人騒がせだったわね。」
「……あっそ。つーか勝手に騒いだんじゃん、そっちが。」
「なるほど、勧誘ね。言われてみれば、思い当たる節があったわ。あの人ったら、去年『ボクは部内では恋愛しない』なんて宣言してしまったものだから、部員が来なくなって廃部寸前だって嘆いていたもの。今年は必死になって、手当たり次第に勧誘してるってわけね。納得。」
まるで説明するみたいに、やけに具体的に、八王子真冬が言った。
途端に、なーんだ、という空気が教室中に広がった。
どうやら、みんなあっさり納得したらしかった。




