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心春は突然立ち塞がった女子を見て、目をパチクリさせた。
「うわ、美人……って、え、なんすか?あたしが何って?」
相手のつっかかるような物言いに、心春の表情がくもった。
「あなたのお名前。姫川心春さん、で合っていたかしら。」
言葉遣いこそていねいだけど、どこか高飛車な口調で聞いた。
彼女のオマケAは、すぐ後ろで腕を組んで仏頂面をしていた。オマケBとCは、心春を見ながらひそひそ耳打ちをしあって、二人でくすくす笑っていた。
雰囲気が悪かった。
結果的に四人全員で、息苦しいような圧迫感を生み出していた。
「あー、うん。確かにあたしゃ姫川だけど。そういうあんたは、えっと……。」
「八王子真冬。八王子夏生の妹よ。」
そう言って、彼女は誇らしげに胸を反らした。
八王子真冬。
居眠りしていた心春は知る由もないけど、昨日の自己紹介のとき、教室がざわついた子だ。
彼女はハンサムな兄に負けず劣らず、見事な美貌の少女だった。外国童話のお姫様みたいだった。
栗色のロングヘアは、ストレートパーマをあてたみたいにまっすぐで滑らか。すらりと伸びた長い手足。雪のような美白の肌に、赤い唇。長いまつ毛に縁取られた、意志の強そうな凛々しい目。
ただ、爽やかそうな兄と違って、彼女は人を寄せ付けないような冷たい雰囲気があった。
端的に言えば、性格がきつそうだった。
自己紹介の時間の後、クラスの男子も女子も、興味があるけど話しかけられないみたいな感じになった。お供みたいにひっついてるとりまきABCは、どうやら中学以来の付き合いみたいだった。
その性格きつそうな美少女が今、くってかかるようにして私の親友と向き合っていた。
「あ、そっすか。ほんじゃ八王子さん、いったん横どいてもらっていいすか。机にカバン置きたいんで……。」
「あなたが八王子夏生とお付き合いしてる。そんな噂を耳にしたのだけれど、本当?」
「……はああああっ?!」




