ep4
「エキストラの方ですか?」
撮影所でADに声をかけられる。
「はい。僕です。」
主演が入ってきた。西条元太。
ほんの少し前まで同じエキストラ仲間だった青年だ。
「見ろよ、アイツ主演だってよ。」
「お前、悔しくないのか?小林さん、お前の現場には一度も来てないじゃないか。」
「まあ、いつものことなんで。」
周囲が囁く。
「アイツもこないだまでエキストラだったのにな……」
「そうだよな。風太なんて一時期はセット売りだったのに、どうしてこんな差が……」
気まずそうに俯く先輩たちに、風太は笑ってみせた。
「全然大丈夫ですよ。事実なんで。」
だが、その直後。耳を疑う噂が流れた。
「そういえば元太の噂、聞いたか?」
「元太がどうしたんです?」
「あいつが売れた本当の理由だよ。」
「本当の理由?」
「この間までエキストラだったのに、いきなり連ドラの主演なんておかしいだろ?」
「確かに。」
「あのパーティーだよ。」
「……あのパーティー?」
「風太、知らないのか?」
「はい。」
「うちの事務所の女社長、西園寺レミさんが主催してるパーティーがあってな。お気に入りのタレントだけを招いて、好き放題してるらしい。そのパーティーに行った奴は必ず売れるって噂だ。」
「な、なぜです?売れるかもしれないのに?」
「……まあ、お前も行ってみればわかるさ。あの女は恐ろしいんだ。二度と関わりたくないと思うくらいにな。」
――背筋に冷たいものが走った。
風太は思った。
自分の未来は、この先どこへ転がっていくのだろうか。