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 王太子であるイリクストは、なかなかに腹黒い男であった。


 ユイリルのこととなると脳が溶けるだけで、油断は冷戦沈着、氷とも評される無表情具合。人間味に欠け、機械のように仕事をこなす謂わばロボットであった。

 くだす判断も冷酷で、自分の益にならないものは、人であれ物であれすぐに切り捨てる。そんな人間だ。

 計算ずくの彼の人生は、先に先にを見据えていて、どこか達観している。



 彼がユイリルと出会ったのは10歳の頃。

 立太子して間もない、王家主催のガーデンパーティーだった。

 その頃から優秀で、その年齢の子供とは頭一つ二つ飛び抜けた才能があり、老若男女問わず言い寄られていた。

 今でこそ即バッサリと切り捨てる物言いたが、この頃はまだ幼く、戸惑いつつも対応している時期であった。


 たくさんの大人と対話をするのは、本人が認識していなくても疲れることだ。

 案の定、終わるころにはクタクタで、王家自慢の迷宮の如しローズガーデンのベンチで休むことにした。滅多なことがない限り、人が入ってこないからだ。


 しかし、その日に限って当てが外れた。ベンチに先客がいたのだ。


 そこに居たのは1人の少女。紺色の髪を可愛らしく編み込んだその子は、トパーズのように輝く瞳いっぱいに涙をためて、ベンチのそばでうずくまっていた。


 はじめこそ一目惚れだった。


 今まで見た何よりも美しく、何よりも守りたくなった。

 泣いてほしくなくて、笑っているところが見たくて、気がついた時には話しかけていた。



「ねぇ、どうしたの?」

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