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待ちに待ったお茶会当日。
はやる気持ちが抑えられないユイリルは馬車から身を乗り出し、わくわくと体を揺らしている。
ようやくと着いた先では、ガチガチに緊張した当主、穏やかに微笑む奥方、冷静に礼をする弟殿に出迎えられ。なかなかに混沌としていた。
「シスフレアっ様、ほっほんじっつは、お日柄もっよくっ!」
噛み噛みの当主の挨拶に返事をしようとユイリルが口を開いた時、奥の扉が開いた。
出てきたのは、花の精と言われても差し支えないほどの可憐な少女。
ブロンドピンクのオフショルダードレスには上品な薔薇のレースが首から胸元にかけて広がり、同じレースのオペラグローブは大人な雰囲気に可憐さを加えている。
作成者のこだわりを感じる腰につけられたリボンには小さなピンクの薔薇が縫い付けられており、友情と愛らしさが十二分に込められている。
ドレスと同色の髪はよく手入れがされ、腰まで波打ち、それまでの甘やかさを引き締めるように烏の濡羽のような艶やかな光沢を持つカチューシャを付けている。
どこをとっても美。美しい少女だ。
「!ユイリル様。お待たせいたしました。本日はお越しいただきましてありがとうございます」
カーテシーを行うも、ユイリルからは一向に返事が返ってこず、びくびくしながら顔を上げる。
一方、その時のユイリルの内心は歓喜一色だった。
「っ!可愛いねっ!リスティア様はやっぱりAラインのドレスが似合うと思ってたんだ!僕的にはマーメイドドレスとかも捨て難いと思うけど、やっぱり王道が似合うのいいね!薔薇の精だ!着てくれてありがとうっ!」
喜びを隠そうともしないその姿にステラは目を丸くし、次にとびきりの笑顔を見せた。
「こちらこそ、ありがとうございます。では、お父様、お母様、ヘル、行ってきますね」
「あ、ああっ」
「いってらっしゃい」
「姉様、気をつけてね」
さあ、楽しいお茶会の幕開けだ。