3
「ベリー、今日はね!リスティア様をお茶会に誘おうと思うの!」
「まあ、良い案でございますね」
「そうでしょう!」
目をキラキラと輝かせて言う。
「それでは、茶会の準備をさせましょう。ユイリル様は招待状をお書きになられたらどうでしょう」
「うん!そうする。ベリーも手伝って!」
「勿論でございます」
「ユイリル様、他にどなたか呼ばれますか?」
「うーん....大丈夫!僕一人で戦えるよ」
どこか誇らしげに言うその様子はやはりしまりない。
「でしたらそのように手配しますね。レターセットに指定はございますか?」
「一番お気に入りのやつ!インクもペンも、僕のお気に入りを持ってきて!」
「かしこまりました」
そうして運ばれてきた便箋に熟考ののち招待状を書き綴る。
========================================
ステラ・リスティア男爵令嬢へ
僕の家の薔薇園で、ローズティーパーティーを開くから、ぜひ来てね!
~~の午前中に迎えにいくから、待ってて!
ドレスコードは薔薇のようなドレス!
楽しみにしてるね!
ユイリル
========================================
「ふんっ!どう?ベリー」
自信満々な様子で今しがた書いた招待状見せつけていく。ベリーはベリーで侍女馬鹿であるため、ひとつ微笑んでユイリルを褒めちぎる。
「大変素敵な招待状でございます。ユイリル様もご上達なさいましたね。ただ...」
「?駄目なところある?」
ベリーは顎に手を当てて少し考え、それから優しくユイリルに向かう。
「いえ、ドレスコードをお決めになるのも宜しいのですが、ユイリル様はリスティア様に着て頂きたいドレスがあるのではないのですか?」
「!っすごいっ!よくわかったね!そうなんだ~!来て欲しいのあるの!でも、ドレス送るのも、なぁって」
主人の葛藤は至極真っ当なものだ。しかし──。
「お送りしましょう。きっとリスティア様も喜ばれると思います。」
「そうかな?じゃあそうする!仕立て屋さんいつ呼べる?」
「30分以内に」
ありがとう、よろしくね!
無邪気に笑う主人は本当に天使がすぎる。
そんなことを内心に隠すベリーのこの行動には意味があった。
普通、上位貴族が下位貴族をお茶会に招待する場合、下位貴族には相当な負担になる。
手土産、ドレス、教養、そのすべてがワンランクどころでない程のグレードアップをしなければならないからだ。
その金額が馬鹿にならないのである。
ユイリルに悪気はない。ドレスコードを設定したのも綺麗な格好をして欲しかっただけ。それでも、下位貴族にとってはなかなかにハードルの高いことで、同時に圧力にもなる。
上のものからきた茶会には、暗黙の了解的に参加義務があり、それがたとえ恥をかかせるための場だとしても行かなければならない。
ユイリルの送ろうとした招待状は意図せずそれを示唆させるようなものであった。
そのためにドレスを送付することを提案したのだ。下位貴族にとっては大金でも、上位貴族、それも公爵家にとってしてみれば、端金も同然である。
互いに楽しめる茶会にするための必要経費だと言えるだろう。
「ベリー!!これ可愛いっ!絶対似合うよ、リスティア様に!」
どうやら、気にいるドレスが見つかったようです。