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月が出て夜もどっぷりふけてきた頃。
女が男に報告をしに王城に登城していた。
「それで?愛しいリルは今日どう過ごしたの?」
「本日は大変お可愛らしい宣戦布告をとある男爵令嬢にされ、殿下との婚約破棄に努めておりました」
「なるほどねぇ」
一見、ピリつく空気になるのかと思いきや───
「はぁ~~~っ、見たかったな~」
「大変、大変、お可愛らしかったです。ご令嬢をいじめるどころか、お名前で呼ぶことすら許して尚、自分はよく出来ただろう、と自慢げに話される姿が、もう...」
「なっ、見たすぎる...。どうしてなんだ。何故、俺はリルと学年が違うんだ?!」
「ご愁傷さまでございます」
頭を抱える男と心底可哀想なものを見る目で男を見つめる女。
その男が王太子であるイリクストで女がメイドのベリーであることは、誰もが承知のこと。
この密会はユイリルの定期報告会なのだった。
「そういえば、ユイリル様、貴方様のことを愛称で読んでおられましたよ」
「...俺がいる時に呼んでくれ...」
追撃をくらう王太子を見るのも、恒例である。