表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不幸、いただきます。  作者: ぽあ
1/1

( まだついてるのかよ )

第1話です。


楽しんで貰えたら幸いです。

よろしくおねがいします。



EPISODE 1



とにかく俺はいつもツイてなかった。



近々で言うと、アパートを出た瞬間に転び胸元で何かのうんこを踏んだ。そしてそれを近所に住む可愛いJK達にバッチリ見られてクスクスと笑われた。

だけでなく、立ち上がろうとした瞬間 目の前を通り過ぎたボロチャリに乗ったおっさんが俺に向かって痰を吐きつけ「道の真ン中で座るな!邪魔だ!」と怒鳴って去っていった。


それでも俺は道の()からおっさんの背中に小さく「すんません」とヘラッと笑って言った。


それが俺、安登 優羽(あんどう ゆう) (24歳)現在就職活動中の男だった。



だが、今日はもうこれ以上に悪いことなんか起こるはずがない。後は上がっていくだけだ!



なんて、

この時の俺は この予想が大きく外れる事になるとは知らずに急いで部屋に戻り着替えを始めた。


なんてったって、この後会社面接の予定がある。その為に俺は今日スーツで外に出たのだ。

時間の余裕は、あった筈だがうんこのせいで

もうあまり無い。



この後起きた事はもうさっき話したものより更に酷かった。

何が起きたかって言うと、



走って乗り込んだ電車は突然緊急停止。

随分と長い間停車した。

そのせいで時間と心の余裕が無くなった乗客達は、電車の出口が開いたと共に、我先にと押したり走ったりで、もみくちゃのぶつかり合いとなったのだ。

そこで犠牲になったのは俺のスマホで、ホームと電車の間へと消えていった。


俺はそこで大事なスマホに別れを告げた。


普通なら駅員さんに言って拾ってもらう選択を選ぶよね?

うん。分かる。普段なら俺もそうしたさ、

ただ今の俺にはもう後がない。


貯金はほぼゼロ、何度も面接に落ち

もう今日の会社に落ちたら本当にまずい状況なんだ!


色々支払わなきゃ家まで失う。

流石にそれだけは絶対嫌だ。

ただでさえ、うんこや遅延のせいで遅刻ギリギリ。

今すぐにでも面接会場へ向かわなきゃ遅刻してしまうだろう。


ホームと電車の間の暗闇を俺は見つめ、ゴクリと生唾を呑み込んだ。


色んな写真や思い出、もう一度見返したいメッセージのやり取りやめちゃくちゃやり込んだゲームのデータ………………さようならだ。




俺は走って駅から出た。


だが……あれ?俺、どこに向かえばいいんだっけ?

いやまず、ビルの名前は?住所は?何階だっけ?


焦りまくった頭では、何にも正確には思い出せなかった。


まずい…まずは落ち着け、俺。

そうだ!周りの人に事情を説明して会社の住所を調べてもらえばいいんだ!


目の前を足早に歩くサラリーマンに声をかける。



「あ、すみません、あの!」ーーーッポタ!



そこまで言った所で俺は頭に″何か″が降ってきた様な違和感を感じる。


恐る恐る、頭上を見上げればデカく黒いカラスが「カァ!」と鳴き、何処か遠くへ飛んで行くのが見えた。

本日2回目の糞だった。


ーー終わった。

もう面接には間に合わない。

駅のトイレに戻って髪の毛を整える時間なんて、今の俺にはもう残されていない。



俺に引き止められ、一連の流れを見てたサラリーマンはクスッと鼻で笑ってから、それを誤魔化す様に「急いでいるんで」と口早に去っていった。


次に目が合ったOL風の女性はびっくりした様子で俺の顔と汚れた髪の毛を交互に見てたが、気まずくなったのか目を逸らし逃げるように通り過ぎて行った。

皆、自分とは関係ないねって感じでどこかへ向かって歩いていく。



…あーあ。きっとみんなは会社に向かってるんだろうな。

行くべき場所がちゃとあるんだよな。


何をしてんだろ。俺は…本当に。





俺は、ずっと()()()()()



子供頃から、理不尽な事や嫌な事不幸な目にばかり会うのはいつも決まって俺だった。

俺は生まれつき″不幸体質″なのだ。


いつか友達に悪気なく言われた「優羽ってなんか可哀想」って言葉をふと思い出した。


そんな事言われても、俺はヘラっと笑って「そーかな?そんな事ないよ」と答える事が精一杯だった。

幼いながらに、正直図星だったのだ。



だから俺は、人より可哀想じゃなくなる為に

元々得意では無い人付き合いも、任せてもらった仕事も精一杯頑張った。周りの人より努力した。


そうして俺はちょっとずつ壊れたんだ。





「ふぅん。それは辛かったねぇ」



!?


気が付くと俺の目の前には優しそうなタレ眉タレ目のふんわりした雰囲気の男性が居た。



「んわぁ!?誰!?」



俺が目を見開きその男性をまじまじと見た。



ミルクティー色したふわふわな髪の毛、

優しそうな顔つき。少しタレ目なのにどこか引き込まれるような瞳。綺麗な身なりで、高そうな黒いシャツを来ている。


ビックリしている俺を安心させる為か、にこりと柔らかく微笑みながら高級そうなティーカップで紅茶を飲んでいる。

ふんわり甘めのいい香りだ。



…ん…ティーカップ??

道端でティーカップはおかしいぞっと思い、視野を広げてよく見てみれば、ココは何処か建物の中だった。


観葉植物、デスク、デスクの上にはPCや本が綺麗に並べられ、コピー機もある。

そのすぐ近くに棚があり、棚の中にはファイルなどがビッシリと入っていた。



俺はというと、何故だか椅子に座っている。

手には謎の湿ったティッシュを握っていて、少し嫌悪感があったがよく分からないのでそのまま握っておいた。

目の前には丸い木のテーブル。

高級そうなティーカップが置いてあり、いい匂いがする。


俺の対面には優しそうな男性が座っていて、

周りをキョロキョロしていた俺と目が合った彼は優しく

「苦手で無かったら、どうぞ遠慮なくお飲み下さい」

と優しく言った。



「ありがとうございま…す?」


「いえ!」


「………」


「………」


目の前の彼はにこにこするばかりで、目が合えばにこっとしてからミルクティーを美味しそうに飲んでいた。



「え?…あの、どちら様?」


「あれ?落ち着いたのかな?何しに来たか覚えてない?」


「え?あ、ハイ。…ていうか、どうやってここに来たかもあんまり覚えないです。」



語尾に行くに連れ、俺の声は小さくなる。


…なんなんだ?この状況は。

さっきまで確かに俺は駅前の道端に居たはずだ。

そして何処なんだ!ココは。

そして誰だ!この人は!




ボソッと何か彼は呟いた。

上手く聞き取れなかった俺は聞き返そうと口を開こうとした瞬間。コピー機がひとりでに動き出し1枚の紙が出てきた。



「従業員登録シートです。」


と、PCの影に居た女の子がひょいっと出てきて、

その紙をてにとると、俺の前にペンと共に置いた。


「あ〜、ありがと。心陽(こはる)ちゃん」


心陽ちゃんと呼ばれた女性は、俺の顔をジーっと見つめてきた。眉下程のぱっつん前髪と艶々ストレートの長め黒髪が特徴的な可愛らしい顔立ちの女性だった。

だが表情はツンっとして見えた。


何も言わずに、彼女はティッシュを取り俺の髪の毛に付いたカラスのフンを取ってくれた。

時間が経って取りずらかったのか、ちょっと強めに髪を引っ張られ少し痛かった。



安登(あんどう)さん…でしたっけ?そちら書き終わりましたら、私に声を掛けて下さい。」


「え?何これ?…あ、てかフン。ありがとうございます」


「いえ。…この紙は従業員登録シートです。」


「従業員登録…え?あの俺………え?」


「っふふ、そーだね。僕から説明するよ」



そう口を開いた彼の名前は市敬 幸永(いちたか こと)と言うらしい。「幸永さんって呼んでね」とふにゃりと言われた。なんだか彼と話していると気が抜けると言うか、妙にふわふわした不思議な感覚になる。が 彼は俺が今いるこの会社のオーナーなんだとか。


そして、心陽(こはる)ちゃんと呼ばれた女性はこの会社のたった1人の事務らしく「守安 心陽(もりやす こはる)と申します」と短く自己紹介をもらった。少しクールな雰囲気だが、フンの事もあり優しい女性なのだろう、と言う印象だった。




と、そんな事より何より

俺は記憶の無い間とんでもない事をしていた様だ。



幸永(こと)さん曰く…


突然オフィスの扉が開きやってきたのは、

ボロボロと大粒の涙を流し大声で「本日面接予定の安登 優羽(あんどう ゆう)です!」と言う俺だと言う。


もちろん、面接予定などは一切 無かったので

俺が場所を勘違いしているのだろうとすぐに分かり

その説明すると、更にボロボロと泣き始めたので

何か事情があるのだろうと、心陽(こはる)さんと顔を見合わせ、この椅子に座ってもらう事にしたのだとか。


俺が落ち着くかなと、善意で丁度飲むところだったミルクティーと涙を拭くためにティッシュ渡してくれたらしい。



涙を拭った俺は急にしゃっくり混じりに長々

「とにかく俺はいつもツイてなかった。近々で言うと… 」

と、話し始めたと言う。



俺は顔がカァと熱くなるのを感じた。



…でもちょっと待てよ?

目の前の紙…従業員登録シートって、



「マァ最後まで話を聞いてよ優羽君。

僕は君の話を聞いてね、優羽君がとても気に入ったんだ」


「えぇ!?絶対嘘じゃん…」


口が滑って本音が出た。しかもタメ口で。

異常な状況でパニクってたし。やべっと思う。

でもなんだか幸永(こと)さんは気にしてなさそうだった。



「アハ、嘘じゃないよ。君さえ良かったらだけどウチで働いてみない?」


「えぇ!!良いんですか!?」


「…うん」


「是非!お願いします!」



何の仕事だとか、給料はいくらかだとか

そんな事どうでもいいと思った。


この人達はいい人だと、直感で思った。

だから彼らと働けるのなら何でもいいと思った。


マァ、追い詰められて焦ってもはや働けるのならば何でもいいと言う考えもなくはないけど。



でも、俺は知らなかった。


目の前に居るこの優しそうな男にあんな秘密があったなんて、この後幸永(こと)さんから説明された″幸せを売る仕事″の意味も、そのせいで奇妙な毎日を過ごすハメになることも…




「俺、精一杯頑張ります!」


と椅子から立ち上がり深々と幸永(こと)さんに頭を下げた。

そんな俺の頭をみて幸永(こと)さんは言う。



「あら、まだ髪の毛(こっち)にもついてるね」





EPISODE 1 ツイてる男


初めまして、ぽあと申します。


最後まで読んで頂きありがとうございました。


初めて書くお話なので、

読みずらい部分や誤字脱字、おかしな箇所が多々あったかと思います。

後日、修正をこっそりする可能性大です。

発見した方はこっそり優しく言って頂けたら凄く助かります。


どうか優しい気持ちで見て頂けたら嬉しいです。

今後とも宜しくお願い致します。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ