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乱暴者が書きあぐねる学生日誌  作者: 二十四時間稼働
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自殺者

 成功の反対は失敗じゃないという奴がいた。僕はそれを信じて、何度も挑戦して、その度に失敗をしてきた。でも、成功に繋がったことは一度もない。いままでそれをずっと繰り返してきた。だが、今日でそれは終わりだ。僕はこの人生から去ることにした。どうせ、僕は一生社会に馴染めない。それならば、この社会から逃げればいい話だ。僕はそうすることで自分の逃げ場所を作っていた。それで、僕はこんな思いなんてしなくても済む。そうすることで邪魔な奴の世話をしなくても済む。それが、世界の役に立つならば、僕はこの場から去ろう。それが、僕の償いだ。否、そもそも僕は罪などを犯していない。ただ、社会が僕を避けている。ただ、それだけの話だ。


 僕は何もない部屋で一人で横になって、外を眺めている。実際は眺めていないが、ただ、外の景色を思い浮かべているだけだ。それを見る度に自分は見捨てられてきたというのが分かる。学校から社会へとなったら、こんなことはなくなると思っていたが、結局何ひとつも変わりやしない。変わるのは、町の風景と僕の風貌だけだ。

 僕は苦しんでいる。社会に馴染めなかったせいなのか、何をしても就職できなかった。一回だけ就職することができたのだが、なかなか仕事内容が覚えず、上司が困り果てた結果、僕はクビにされた。それを言われたときはショックだったが、矢張り僕はこの社会で馴染めることはないと思った、

 だから、今の僕は無職だ。ちょっと前まではフリーターだった僕が今ではもうニートになってしまった。もう仕事をする気力がないのだ。どうせ、就職したとしても前みたいにクビにされるだけだ。それならば、仕事なんかしなくてもいい。そうしたほうが僕の荷も軽くなるはずだ。

 僕は特にやることがなかった。ずっと、家にいるのもなんだかと思い、今度は本物の外の景色でも顔を出すことにした。ドアを開けた瞬間、煙が僕の視界に入り、ガソリンの臭いが僕の目の前に漂っている。僕は反応的に鼻を押さえた。そして、他の奴等の姿を見た。彼たちは平気な顔をして、普通に仕事をしている。その光景を見ると羨ましいと思った。こいつらは、社会に馴染めた奴等で僕みたいな苦労はしていないだろう。

 怒りを覚えながら、僕は図書館へと向かった。僕は時々図書館に向かう。特に読みたい本があるわけではない。ただ、家にいるのもなんだから、図書館で時間を潰そうかという感じだ。

 僕は検索器を触ったりして、色々な本を見回った。そこで、ある本を見かけた。「廃墟の歩き方」という本のタイトルだった。開いてみると、そこには廃墟の写真が載っており、ここを歩くと危ないよなど、本当に歩き方が書いてある。僕はそれを借りることにした。 

 借りた後はそのまま家に向かった。家に帰ったら、本を持ちながら寝てしまった。

 

 翌日、僕は本に書いてある廃墟のところに行くことにした。なぜ、行こうとしたのか分からない。ただ、見てみる価値はあると思う。

 僕は親に仕送りで貰ったお金を使って、電車に乗った。電車に乗るのは久しぶりで、矢張り、あまり慣れない。人が少ないのが幸いだった。もし、ここが満員電車だったならば、僕は耐えることは出来なかっただろう。だから、人がいなくて良かった。

 そう思いながら、電車に揺られているといつのまにか目的地の駅に着いた。僕は降りて、この町の景色を見た。否、町というより村だろう。村の景色は僕が今住んでいる都会とは違って静かであんな異臭がするようなところではなかった。

 空気が自然たちによって綺麗になっている。そのせいなのか呼吸をするたびに息苦しくなるようなことはない。こう考えるとこの村のほうがいいのかもしれない。どうせ、僕はあそこにいたとしても何もしないのだから。

 そんなことは考えてはいけないと思い、図書館で借りた本を取り出した。その本を見て廃墟の場所を確認した。確認した後、また歩き出した。廃墟に行って何の意味があるのか僕には分からない。でも、行ったほうがいいと思った。そうしなければ、僕の居場所はまた無くなってしまうような。


 廃墟に行くには駅から遠い山のほうに行かなければならない。だから、僕はバスの停留所に向かった。矢張り、ここは田舎なので、人がいない。僕はこの村を独占したみたいだ。少し独裁者の気分を味わいたいと思う。ここが僕の居場所になったらいい。そうすれば、僕の苦労は無くなるかもしれない。だが、そうしていけない。あの社会で生きるのだ。僕は。

 僕はバスに揺られて、気分が悪くなった。流石に速い乗り物を連続で乗ると吐き気が襲ってしまう。そんな僕はだらしないのだろうか。そういうだらしない人は社会で生きるのは無理なのだろうか。否、ここで考えるべきではないことだ。

 ついに到着した。そこは山のほうなので、森林が延々と生えている。その森林はここの風景を潰しているように思われた。なぜか、この田舎の町には合わない。合うとしたら、人間の死体かな。

 この山は誰も住んでいない。だが、ある程度、発達している。昔、誰かが住んでいたのだろう。それで、たくさんの工場があるのだろう。だから、森林は合わない。それでも、田舎のようで、餓死者がいそうな雰囲気を醸し出している。不思議な風景だ。まるで、ここは人間ではなく、人間ではない違う知能を持った生物が作り出した町のように思われる。

 そんなことはどうだっていいだろう。とにかく、この町は陰湿なものなのだ。だが、居ても居心地は良い。ここは死ぬ場所には丁度いいだろう。だが、その前にこの森林を伐採して欲しい。じゃないと死ねなくても死ねないではないか。

 それはいいか。僕はもう二度とここにはいれないのだから。僕は死ぬのだ。この場所で。死ななければならない。それが、僕の役目でそのためだけにここに来たのだ。

 僕は歩き出した。廃墟のところへ。


 廃墟に着いてみると、写真で見たよりも綺麗だった。というか、まだ建てられたばかりのものかと思ってしまった。ここの場所で本当にあっているのかと疑ってしまうほどだ。まさか、ここに誰かが住んでいるじゃないだろうな。でも、今更あの家に戻っても仕方がない。僕は死ぬ役目があるんだ。早く、死なないといけない。

 僕はまた歩き出した。何処に行こうかと迷ったが、食堂に行くことにした。そこには食べかけのパンやらごはんなどが落ちていた。それはまだ食えそうであった。矢張り、ここには誰かが住んでいる。そうに違いない。僕はもう一度、あの本を取り出した。本の表紙には「廃墟の歩き方」ではなく、「田舎町の過ごし方」であった。僕は間違えていたのである。ここは廃墟ではない、否、もしかしたら最近廃墟になったものであるかもしれない。それよりも僕は何故、「廃墟の歩き方」と「田舎町の過ごし方」を間違えたのかを考える。写真は出発する前に見たから、そのときは持っていたはずだ。ああ、そういえば僕は駅で「廃墟の歩き方」を取り出したな。だが、僕は場所を確認しただけで、そのあとすぐに鞄の中に入れたはず。それにもしあのとき「廃墟の歩き方」を持っていなく、「田舎町の過ごし方」を持っていたとしても、ただ僕は場所を確認しただけ。だから、駅で落とすようなことはない。要するに僕は「廃墟の歩き方」を持ってくるのを忘れただけ。そして、間違えて「田舎町の過ごし方」を持ってきてしまった。そこはどうでもいいんだが、問題なのは何故、「廃墟の歩き方」と「田舎町の過ごし方」を間違えたか、だ。

 そこであることを思い出す。僕は電車に行く前にトイレに行った。そのとき、荷物はホームの座席に置いたままだった。たぶん、そのときに摩り替えられたのだろう。なんという奴だ。すぐに奴をトッ掴まないと。はやく、返してもらわないと。電車賃代の金を取らないと。ああ、最悪だ。矢張り、この世は糞みたいな奴等しかいないな。次の世界にいるときには、そんな奴等がいなければいいのにね。僕を救ってくれる人たちがいればいいのにね。

 僕は物々と文句を言いながら、今後どうするかを考えることにした。この廃墟で自殺できるのだろうか?誰かがいそうなところで自殺してもいいのだろうか?一回、家に戻ってそういうことを考えたほうがいいのだろうか?違う図書館でもう一度、「廃墟の歩き方」を借りたほうがいいのだろうか?他の場所で自殺したほうがいいのだろうか?いっそのこと自殺しないということにしたほうがいいのだろうか?また、僕は同じような日常を繰り返さないといけないんだろうか?僕は本当に死ぬべき人なのだろうか?自殺したら、何が起こるのだろうか?自殺した何か意味があるのだろうか?本当に世の中は僕を見捨てたのだろうか?

 ・・・・・・どんなことを考えても何ひとつ答えを導き出せなかった。とにかく、この建物の屋上を目指そうと思った。自殺しないか、自殺するかはそこで考えよう。

 ダンッ、ダンッ、ダンッ、ダンッ。

 僕はゆっくりと階段を上り、足に力を込めて、音を響かせている。何故、そんな風に歩いているのか僕には分からない。なんだか、知らないけど歩き気力がない。そのせいで、ゆっくり歩いているのだろうか?ま、そんなことは考えなくていいか。とにかく、僕は屋上を目指さないといけない。

 一時間以上もかけて、やっと屋上へと繋がるドアの前に着いた。僕は手を膝の上に置いて、ぜえ、ぜえと息を切らせながら、呼吸を整えた。そして、ゆっくりとドアを開いた。

 ヒュウー

 強い風が僕を襲ってきた。僕は反射的に手で顔を守る。顔を守っても何の意味もなく、否、逆効果になり、体を集中攻撃され、僕はその場に尻餅をついた。僕はすぐに尻を上げて、尻についた埃を払い、僕は地面を支えにして、何とか立ち上がった。その瞬間、僕は目を疑ってしまう、光景を目撃してしまった。

 そこには、僕よりも相当年下な女の子で、僕に背を向け、フェンスよりも前に出ていて、今すぐでも飛び降りそうであった。こういうとき、僕はどうすればいいのだろうか?矢張り、僕は彼女を救うべきなのだろうか?そんなことを考えながらも、僕は彼女に気づかれないように、ゆっくりと、ゆっくりと、彼女との距離を徐々に近づけ、飛び降りても僕が捕まえる程度まで近づけた。僕は彼女が飛び降りるの待つことが出来ず、僕は彼女に抱きついた。そして、落とさないように後ろ側に力を込めて、僕のほうに寄せた。そうすると、彼女はフェンスより後ろに行き、これで、もう彼女は死ななずに済んだ。

 だが、僕は彼女を助けてやったのに、叩かれて「気持ち悪いんだよ、中年のおっさん」と言われ、自分の家へと向かった。実際はどうかわかんないけど(彼女が向かった場所は)ま、そうしておいてもいいかな。


 ・・・・・・僕はいつの間にか家に戻ってた。本ばかりが溢れている部屋で僕はある本を探そうと思った。僕は何だか自分を信用できなくなり、僕はある本を探している。その本は「廃墟の歩き方」である。そして、数十分後、それはあった。矢張り、僕を信用してはならない。そこで僕はある疑問が芽生えた。

 僕は誰も信用できなくなった。自分すらも信用できない。ならば、僕はこれからどう生きればいいのだろうか?自分が信用できないなら、僕は何処にも進めないじゃないか。どうすればいい? 

 そうだ!これから僕の考えた逆のことをしよう。目立つような場所で自殺をしよう。そうすれば、こんな疑問なんて解決だ。うん?何かおかしいじゃないか。ま、どうでもいいか。


 世の中に向けて、メッセージ


 どうも、どうも。いつも、僕を虐めてありがとう。そのおかげで、僕が小さいときからこの世が残酷だと分からせてくれたね。僕の体中はボロボロだよ。今だって、殴られた痕があるよ。痕に水が当たると、痛くて痛くて仕方がなかったよ。でも、仕方がないよね。それが、この世が残酷だと分かってしまった、代償だもんね。ああ、生きるのがつらいよと何度も思ったよ。でも、そんなことを思うのは今日で最後。だって、僕は自殺をするんだよ。もう、明日には僕はこの世から去っているだよ。もう、君たちに会わなくて済むんだよ。やったね、僕は嬉しくてたまらないよ。今日は眠れないだろうね。あ!もう明日にはいないのだから、眠るとかもう無縁になっているんだね。はあ、本当にこんなんでいいのだろうか。君たちは僕のような人を見捨てていいのだろうか。君たちは少しでも、考えるべきだよ。相手が嬉しそうに、やった今日でこの世とさらばだ、と言っているのにそのまま素通りしていいのだろうか。そして、自殺者に言っておきたいことがある。変なおっさんでも、かっこいい男でも、変なオバサンでも、可愛い女でも、自殺する瞬間に助けてもらったら、文句を言わないで欲しい。ただ、ゆっくりと「すいません」と言ってくれ。たったそれだけだから。その後に自殺するのは勝手だ。ま、そんなことは僕には環形ないけどね。僕は別に見捨てても構わないよ。僕は全然平気だから。僕は強い子だから。耐えることだけが、唯一の自慢だから。

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