ある男の一生
その男は何をやっても上手くいかない。失敗ばかり、周りの人から冷たい目で見られている。その姿は滑稽なのかは分からぬ。だが、彼自身はその姿を滑稽に思っているらしい。そんな人間は社会に必要とされていないのだろうか。そう、彼は社会のゴミのような存在である。そんな悲しい人生を送っている。彼の過去も現在も未来もろくでもないことしかない。そんな人生を君は耐えることが出来るのか。普通の人だったら、耐えることはできない。だから、彼はよく耐えてきたと思う。自殺した彼はよく生きれることが出来たと思う。そんな彼には賞賛の歌を贈るべきだろう。それが、自殺した彼のご冥福だと。社会のゴミにした奴等の償いだと。この世の人間はそんな罪を背負っていながらも、それを気付かないようにしている。そんな卑劣な奴等は何だかの罰を与えたほうがいいのでは。そしたら、あの世に逝った彼も安らかな気持ちであの世を満喫できるのでは。その罪を認めさせるには彼のことを話さなければならない。彼が死んだ経緯と彼がどれほどまで傷つけられてきたのかを。それが彼のためなのだ。それが彼のための償いなのだ。それが彼を追い詰めた奴等の宿命なのだ。
僕は裕福な家庭に生まれた。だから、不自由な生活せず、好き放題やっていた。だが、それは家の中の話で、学校に行けば、それは全く違う。要するに僕は虐めにあったのだ。その虐めは年を重ねるごとに、悲惨なものになっていて、最初は物を隠す程度だったのが、今では僕は体を傷つけている。僕はその虐めを必死に耐えた。なぜ、僕だけがこんな目に遭うんだ。と、自分に問い詰めていたのだが、答えは見えている。それは、僕が金持ちだからだ。金持ちだからと、こいつはいじくそ悪いやつなんだぞ。と勝手に決められて、僕は虐めに遭っている。そんなことがあっていいのかと思うのだが、虐めなど些細な理由だけで虐めたくなるものだ。虐める彼等は弱いのだ。自分が弱いから、自分よりも弱い奴を狙って、自分を強く見せたい。ただ、それだけだ。そんな奴に虐められるなんて、僕は家族の名を汚している。だから、僕は誰にも言えずに耐えることを選んだ。僕が強くなればいいのだが、あまり、運動が得意ではないので、努力をしたいとは思わない。
僕は朝の今日も体育館の裏側に虐める奴等が僕を呼んだ。そこで、僕を蹴り飛ばしたりしていた。「〇〇選手、ゴールに向けてシュートしました」と言って、僕の頭をサッカーボール代わりにして、遊んでいた。その遊びに満喫したら、「調子乗ってんじゃねよ、おぼっちゃま」と言い残して、僕の顔に向けて唾を吐いた。僕は虐める奴等を去るのを見送った後、そこら辺にあった蛇口を捻って、顔を何度も洗った。
くそっ、調子乗ってんのはあっちのほうじゃないか。僕はただ、耐えているだけなのに、それをいい気になって、僕の頭をサッカーボールにして、遊んでいた奴は奴等じゃないか。僕が文句を言っていないから、好き放題に僕の体を痛めつけているじゃないか。僕は腹が立ちながら、顔を洗っていた。
ある程度汚れが取れたら、蛇口を硬く閉めて、服で顔を拭いた。僕はそのまま、あの嫌な教室へと戻った。
教室に戻ったら、クラスの皆は僕を睨みつけて、僕に悪態をつけていた。そんなに金持ちはいけないことなのだろうか。こんなの不公平だ。僕は好きでお金持ちになったんじゃない。ただ、父の仕事は金儲けが出来る仕事なだけだ。
そう考えていたら、教室に教師がやってきた。教師は教室にはいってすぐ、「今日から転校生が来る」と言って、廊下に転校生らしきものを呼んだ。その転校生は女の子だった。その女の子は美少女と言ってもいい、可愛らしい顔だった。彼女は教室に入って、黒板に自分の名前を書いた。「〇〇玲子です。よろしくお願いします」そう言ったら、先生は僕の隣の席を指し示して、彼女を僕の隣の席に座わらせた。座った瞬間、彼女は僕に話しかけてきた。「一年間同じクラスだね。どうか、私と友達になってくれたら、嬉しいな」そう言って来たから、僕は「こちらこそ、よろしくお願いします」と答えていた。そう言ったら、あの虐める奴等がにやりと笑っていた。
それから、僕と彼女は友達になって、よく一緒に弁当を食べたり、話をしていた。それでも、矢張り、虐めは止まらなかった。友達がいるんなら、止めようという考えはないらしい。僕はその虐めを耐え続けた。どんなに苦しくても、彼女がいるのだから、大丈夫だろうと思っていた。
そんなある日、彼女は自殺した。その原因は僕が彼女と友達になったことだった。僕は虐める奴の会話を聞いてしまったのだ。その内容は「彼女は良い体だったな」「彼女はあいつのことを必死に守ろうとしていたな」「彼女はあいつを守るために自分の体が犯されても耐えていたな」だった。僕は怒りが頂点まで登った。僕はいきなり、虐める奴に殴りかかった。それが僕の人生の最初の最後の逆襲だった。
いつの間にか僕の辺りは血で充満していた。僕は人を殺してしまったのだ。人の怒りは怖い。ここまで、弱かった奴を強くする原動力になるのから。
もちろん、僕は少年院に入れられた。僕は三人以上も殺してしまった。だから、罪は何十年にもなった。僕が少年院から出られた頃には、大学生の年齢になったいた。僕はすっかり、背は伸びていたが、体は前よりも細くなっている。
僕は一旦家に戻ることにした。だが、父は僕を家から追い出した。「もう、お前は俺の子じゃない。二度とこの家に来るな。俺の目の前から去れ」そう言われた僕は「こっちだって、二度とこの家から顔を出すか。子供の心配もしない奴はもう僕の親じゃない」と言った。父が僕を家に入れさせないのは分かる。だって、僕は罪を犯してしまった人間で、もう普通の人間としては見られない。
これから、働くことにした。だが、何処に行っても、僕を採用してくれる人はいない。そりゃそうか。僕は小学生を中退しているのだから。そんな奴を採用するはずがない。そう、僕は社会のゴミになったのだ。
僕は最後の望みとして、汚れた職に働くこと申し込んだ。そうしたら、僕は採用された。だが、その仕事はとんでもなかった。人の排出したものや動物の死体の処理だった。それは臭くて、鼻を押さえても、何も臭いは変わらなかった。
僕はその職場でも虐められていた。人の排出したものや動物の死体の上に乗せて、「ここがお前のお似合いの場所だな」と笑いながら、先輩の奴等に言われた。しかも、そいつ等は全部僕に仕事をやらせて、遊んでいるのだ。上司はその姿を見ても、知らん振りをしていた。
僕はいつかこいつ等を殺そうと思った。
それが今日、実行することになった。僕は同じように虐められていた。そして、彼等は僕のほうを向かずにぺちゃくちゃ喋っていた。その隙に懐に隠しておいたナイフを取り出して、彼等に向かって、刺しまくった。上司や虐めた奴等を。
気付いたら、職場には僕以外誰もいなかった。
次こそ、警察に捕まったら、死刑になるのだろう。だから、僕は自殺しなければならない。目立つ場所がいいかもしれない。こんな結末にさせた世の中に見せ付けてやる。
「僕はここに生きているが、今から僕は死ぬ。僕は生きてて良かったと思ったことがない。てめぇらには生きてて良かったと思ったことがあるか。あったら、てめぇが腐っている証拠だ。人を虐めるのが楽しいか、その虐めを見ているのが楽しいのか。虐められている奴なんか、生きる意味もない。生きているのかが分からないかもしれない」
「犯罪はお前等が作ったものだ」