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乱暴者が書きあぐねる学生日誌  作者: 二十四時間稼働
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小説で蠢く者たち

 或る一人の男が小説というものを書いていた。その小説は不思議なもので、僕たちには到底マネが出来ぬ小説になっている。その小説に出てくる者達が自由に動き回っている。それは、僕たちの世界に一致するものだ。そう、この小説家が書いているのではなく、小説に出てくるも者達が動き、小説を作っていると思う。だから、それをマネできるはずが無いのだ。誰にも・・・・・・この小説家が生きている限り。この小説は何があってもマネはできない。僕が思うに今はこの小説家に住み着いていて、死んだら又どこかに云ってしまうのだろう。たぶん・・・・・・

 

 「起きろ。」

 僕はその声は目覚まし時計から聞こえてきた。だが、僕は目覚まし時計の上に付いてあるものを押したら鳴り止むのを知っているのに、めんどくさくて押そうとは思うはなかった。

「起きろ。」

その声は先程よりも遥かに大きなものになっていた。だが、めんどくさくて押そうとは思うはなかった。

「起きろ」

その声は先程よりも遥かに大きなものになっていた。僕は驚いて、ベットから起き上がった。そして、急いで目覚まし時計の上に付いてあるものを押した。

「起きろ」

その声は先程よりも遥かに大きなものになっていた。僕は鼓膜が破れそうと思い、急いで耳を強く押さえた。あれ、なんで鳴り止まないんだ。これ、壊れているのかなと思い、何度も目覚まし時計の上についてあるものを強く押した。

「起きろ」

その声は先程よりも遥かに大きなものになっていた。・・・・・・・


 

 これからは何にも思いつかなくなってしまった。くそ、なんか今回とんでもない作品が思い浮かんだはずなのに。いつも、いいところで内容が分からなくなってしまう。この後は結構大事なところだと僕は思うのに・・・・・・

 おっと、僕が誰かを紹介しないとね。じゃないと、僕が何処の誰か分からないよね。いきなり、変なおじさんが現れたと思われたら、誰も読みたくなくなるね。まっ、それはそれでいいけど。そんなことより、僕の名は松本光流だ。歳は三十五歳で独身。一応、職業は小説家。まだ、デビューして、やや一年。賞はよく分からん新人賞。その賞を取った作品は「嘔吐」。「嘔吐」という作品は、タイトル通り嘔吐についての話だ。例えば、


 僕はとても貧乏で食べ物はそこら辺に生えている野草のみ。時々、僕の取った野草には犬のうんこやしっこが付いていた。僕は他に食べるものが無いから仕方なく食べた。くそ不味かった。こんなの食べ物ではない。吐きそう。やばい、黄色いもの達が喉のところまできやがった。おえーー。ついに吐いてしまった。その光景を見ていた親は怒って、その嘔吐したものはもった無いからもう一度食べなさいと言った。僕は仕方なく言われた通りに自分の吐いた黄色い者達の掴める食べ物を拾って食べた。不味くて、また嘔吐をしそうになったが、なんとか飲み込んで我慢した。取りにくい黄色の液体はそこら辺にあった雑巾で拭いてバケツの中で絞って、バケツを持って飲んだ。仕上げに雑巾を吸って、自分の吐いた嘔吐を残さずに体内に入れた。不味かった。早く、口の中を濯ぎたかった。僕は急いで、家の中から出ようとしたが、親が危険だから、今日は行くのを止めなさいと言った。


 ・・・・・・これ以上話すとこの小説が分かってしまうので止めとこう。続きが気になる方は本屋に売っているので、そこで買って読んで下さい。

 どうだろうか。僕の小説は。とても、気持ち悪くて嘔吐が出そうになっただろう。でも、ご安心を。嘔吐をしたら、この小説通りに嘔吐をしたものを食べてください。これで、嘔吐をしたのが無かったことに。

 とにかく、僕は今とても困っているのである。せっかく、皆様に最高傑作を提供しようと思ったのに。この続きが全く思いつかないのである。

 僕は気を静めるために風呂に入ることにしようと考えた。僕は風呂場に行って、服を脱いだ。うわー。最近太ってしまった。中学生のときは凄くスマートだったのに。高校生になって、ストレスが溜まって激太りになって、今の体になってしまった。そんなことは今はどうだっていいんだ。小説のアイデアが出来るために風呂に入ろうとしたんじゃないか。

体のことはもういいんだ。

 僕はシャワーを浴びた。最初、頭を洗って、その次に、顔をよく洗って、それで、体をごしごしと洗って、最後に、また頭を何度も洗う。そして、溜めておいた風呂の中に入った。やはり、気持ちが良かった。でも、それは一瞬だけで、重さで流れていく湯を見て、涙が出た。うーうー。くそ、なんで僕はこんなにも太ってしまったんだ。くそ。

 いや、今はそんなことはどうだっていいんだ。小説のことだけを考えるんだ。うーん、やっぱり、さっきの続きは夢オチで終わらせる短編小説にしようかな。よし、そうしよう。

 僕は早速さっきの小説の続きを書くために思いっきり立ち上がった。立ち上がったときに僕は湯を見てがっかりした。湯は僕の膝よりも下だった。やっぱり、ダイエットしたほうがいいのかな。急いで、服を着替えて、自分の仕事場に行った。

 仕事場には色んな分野の資料が囲まれてあって、その真ん中にノートパソコンが一台だった。僕は早速ノートパソコンの目の前に座った。僕はノートパソコンに書いてあるものを見て、椅子から転げ落ちた。ど、どいうことだ。なぜだ。僕はまだこの小説の終りまで書いていないはずだ。

 僕はただ、幻覚を見ていただけだと思い、目を擦ってもう一度ノートパソコンを覗き込んだ。やはり、この小説は書き終えてある。誰かが書いたのだろうか。まさか、不法侵入者。それは無いか。だって、四百字の原稿用紙百枚を三十分で書けるわけ無いじゃないか。それはこの僕でも無理。というか人間には無理だと思う。誰が一体この小説を書いたんだ。

 ・・・・・・そういえば、「嘔吐」という作品にもこういう現象があったよな。たしか、あれはこれと同じ状況だったよな。まっ、今は話す必要は無いか。それより、この小説の内容が気になるだろう。最後まで、話す必要は無い。続きが気になるなら、本屋に行って買って読んで下さい。


 

 「起きろ。」

 僕はその声は目覚まし時計から聞こえてきた。だが、僕は目覚まし時計の上に付いてあるものを押したら鳴り止むのを知っているのに、めんどくさくて押そうとは思うはなかった。

「起きろ。」

その声は先程よりも遥かに大きなものになっていた。だが、めんどくさくて押そうとは思うはなかった。

「起きろ」

その声は先程よりも遥かに大きなものになっていた。僕は驚いて、ベットから起き上がった。そして、急いで目覚まし時計の上に付いてあるものを押した。

「起きろ」

その声は先程よりも遥かに大きなものになっていた。僕は鼓膜が破れそうと思い、急いで耳を強く押さえた。あれ、なんで鳴り止まないんだ。これ、壊れているのかなと思い、何度も目覚まし時計の上についてあるものを強く押した。

「起きろ」

その声は先程よりも遥かに大きなものになっていた。ついには僕の鼓膜が破れてしまった。これで、僕の耳は使い物にならなくなった。だが、これであの目覚まし時計の声は聞こえなくなった。このことを伝えるために親のところに行こう。

 僕は急いで、親がいる一階に降りた。大丈夫だろうか。まさか、親も鼓膜が破れてしまったのではないのかと思いながら降りた。親はいた。僕は耳が聞こえるか確認するために親を呼んだ。

 そしたら、親の二人は僕のほうに振り返った。僕は安堵の息を吐き、今日の朝にあったことをすべて話した。親の二人は驚いて、朝にあったことを信じなかったが、僕の耳が聞こえなくなったのは分かった。親の二人は早速病院に電話したと思う。

 親の二人が僕を外に誘導したので、僕は素直に付いて行った。父は車のキーを持っていた。だから、たぶん車で病院まで連れて行くのだろう。僕は母に後ろの座席に乗せられた。もちろん、父が運転する。母がみかんジュースを僕に渡した。僕はみかんジュースが好きなので、すぐに開けて飲んだ。

 数十分後、車に揺られて眠たくなったので寝た。

 僕はある夢を見た。それは、小説を書いている夢だ。というか、親の悪口を書いたものだった。僕がこんな夢を見るのは初めてだった。いつもの夢は親と仲良く楽しく暮らしているはず。僕の中で何かが起こってしまったのだろう。それとも、親たちが僕に何かをしてのだろうか。

 僕は目を覚ました。目を覚ました場所は病院ではなかった。そこは、ガラスが床に散らばっていたり、家具はバラバラに砕けていた。まるで、そこは廃墟だった。僕はあの親に捨てられたと理解した。僕の目には透明な涙が出ている。たぶん、この涙は人生で最初の最後になるだろう。だから、母に飲まされたみかんジュースは睡眠薬が入っていたのだろう。なぜ、僕がこんなところに捨てられたのだろうか。僕は何も悪いことをしてないはず。まさか、僕がこの耳が使いないから、育てても意味がないから捨てたのだろうか。いや、僕の親はそんな残虐なことはしないはずだ。

 たぶん、僕を怖がらせるためにこんなところに置いたんだ。どうせ、すぐたったら戻ってくるさ。必ず、いつか・・・・・・


 僕はこの小説を読んで、ポロポロと涙が零れ落ちた。訳が分からなかった。何故僕が泣くのが。まるで、僕はこれを体験したことがあるから、ただ共感して泣いた。そんな気持ちだ。だが、そんな体験など一つもしたことがない。現に僕は耳が使えるから確実に体験していないという証拠になるだろう。それでも、泣いていた。その涙は日が暮れるまで止まらなかった。

 ・・・・・・数週間後。僕はこの小説を編集者に渡した。その作品はまたよく分からん賞を取った。

 僕はこの賞を取ってある決意をすることにする。小説というものは小説が作るのではない。それでは訳が分からなくなる。やはり、小説は小説家が書くから小説になるものだ。

これからは僕が書くことにしよう。誰にも書けないようなそんな作品を。僕には才能がある。小説の奴らが書かなければ、素晴らしい賞を受け取ったはず。

 そして、いつか芥川賞を取るそれが僕の夢。


そんな訳の分からん小説を僕は書いている。だが、この小説も僕が作り出した小説家が勝手に書いてしまった。僕が思ってもいないことを。



 人間には元々小説の書く才能が無い。だが、生み出すことは出来る。僕は生み出すことは出来ない。こんな糞作品しか書けないから。ただ、それだけ。僕はそんな糞人間だ。

 でも、人生で蠢いていたい。それがダメなら、せめて、小説の中で蠢かしてくれ。小説で蠢くものたちになりたい。お願いだから・・・・・・・

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