ストーリー
何も考える事無く借りた小さな部屋
勢いと情熱だけで突っ走っていた
不安なんて欠片も感じずに笑う声だけが響く
動きだしたのは名もなきストーリー
見るモノ手にするものが目新しく
どんな自分にでもなれる気がしていた
どこから来るのか自信だけが有った主人公
挫折や絶望などは当たり前に考えて無い
どうすればいいのかなんて聞く当てもなく
どうしたらいいのか良いのかと迷い続けて
独り暗闇の中で迷子になり
疲れ切った体がたどり着いた部屋でまた絶望する
始まったのは未来が明るい物語だと
いつから錯覚していたのか知らないけど
机の前何も進んでいない真っ白な紙を見つめ
ただただ進んでいないことに失望する
描いていたストーリーのかなの主人公
苦難も絶望も乗り越えていく
出会いがあれば別れもある
そんな中で笑顔を絶やさずに前を向く
憧れていたのはそんな主人公なのか
それともその中にいる自分か……
勢いのない冷たい水を浴びるだけのシャワーで
凍える身体を静かに抱くけど
あの時描いた夢の欠片は
纏まっていく水滴と共に流れていく
迷い無く借りた小さいはずの部屋
今では広いとさえ感じるこの場所は
動けないままの自分を除いて
窓の外 映る景色とため息だけが響く
手にできない 何もできない
不安しか感じる事が出来なくなって
あの時無かった感情がやけに虚しい
動きだしたはずの楽しいストーリー
主人公になりたかった
物語になるはずだった
憧れていたのは主人公になのか
それとも物語の中の自分か……