チンピラなので追放
「はあ? なんで俺が抜けなきゃいけねぇんだ!」
怒号と共に机へと拳をたたきつける。
「どうしてって、君のそれだよ。君はハッキリって僕らのパーティー『銀翼』にふさわしくない」
王都にある城の一角の部屋。パーティーの集会場で『銀翼』と呼ばれるSランク冒険者の仲間、魔法剣士――アレス・スタンたちに、俺、ジン・ギレイチカは追放を言い渡されていた。
「なんでいきなりそんな話になるんだよ!」
「そんなの当然な話じゃない」
黒魔導士――ククリア・エレアが言う。
「ここにいるのはあなた以外全員が貴族、ただの冒険者から成りあがっただけ(・・)の平民と違うのよ」
それに、白魔導士――ルーナ―・ケルミが続く。
「私たちは、王国に認められて、Sランクになりました。分かるでしょう。Sランクになったというのに、平民のアナタが居ては貴族の身内に示しがつかない。それに、アナタの職業はあまりにも私たちには不釣り合いです」
そして、さらに戦士――ガイル・クアラルンプールも言うのだ。
「だいたい、お前の職業はなんなんだ。喧嘩屋って、今まで思っていたけど、あまりにも庶民すぎる。ハッキリ言って野蛮なんだ」
俺以外全員が貴族で構成されたパーティー。元々は駆け出しのFランクの俺が声をかけられたのがパーティーを組んだきっかけだ。
あの時は俺みたいな荒くれ者を、貴族が迎え入れてくれて、それから一緒に活動しだして、今では国が認めるSランクパーティーとなった。これまで、死戦をいくつも潜り抜けては一緒に笑いあった中だったのに……。
けど、そっからの態度がこれだ。
「あまりにも酷すぎるだろ!」
「酷くないさ。所詮はもとから人数合わせなんだよ貴様は、ただの平民風情が、今すぐここから出ていいけ」
「チッ、分かったよ。テメェらとは二度と顔を合わすのもごめんだっ!」
アレスに言い離されて、魔が差したのか俺も単価を切ってその場を出て行った。
とまあ、パーティーを追い出された訳だが、これと言ってこれかどうするということもなかった。
というより、なにもやりたいこともなかった。
元から、自分の態度の悪さや乱暴だということも知っていた。けれども、分かったうえで、それなりに相手には丁寧に接する努力はしてきたし、ひといちばい誰かを助けるようなことをしてきたつもりだ。
なのにこんな。
「ああ、くそっ……」
城を出て、街を歩きながら悪態をつく。
すべて、このクラスのせいだ。
冒険者になる時、クラス鑑定をする。大抵の人間はクラス鑑定をすると、剣士やら黒魔導士やらの基本職の才能を鑑定される訳だが、俺の場合はそれとは違う特殊な職、喧嘩屋で、厄介なことに、鑑定されてその職を受け入れてしまうと、それに応じた深層心理がより深くなる。
その結果だ。
元から、ぶっきらぼうだったというのもあるが、俺はこの通り立派な人間とは言い難い性格となってしまった。
「これからどうしろっていうんだ」
パーティーを追い出されて、その上で誰か頼れる知り合いがいるわけではない。
貯金が無いわけではないが、何もしなければすぐに底を尽きてしまうだろう。
「はあ……。気晴らしにギルドでも行くか……」
どうしようもない現実に、行き場もなくただいつも通りギルドに行くことにした。