2話 下剋上ライフ
くぅぅ、戦国時代に来れたと思ったらこれかよ。百姓、百姓、百姓!
文句ばかり言っても仕方ない。神頼みなんてするんじゃなかった。他力本願じゃないか。
それに今回の一件で神様が、どれだけ頼りないかということが分かった。
これからは自分の力で頑張るしかないなあ。
「聞いてんのかい!?」
苛立った声が聞こえた。はっとして目を上げると、母さんが仁王立ちをして俺を睨んでいる。この目は、危険信号だ!
「はい、もう一回言って?」
「全く、仕方のない子だねえ。おつかいに行ってちょうだい。買う物はこの木簡に書いてあるから。もしもの時の為に、必要なお金より少し多く渡すけど、余計な物を買ってきたらただじゃおかないからね」
母さんの瞳が鋭く光る。
「もちろん」
「あと、道草をしないこと。トカゲ探しは駄目よ?」
「はあい」
トカゲ探しなんてする訳がない。俺は大の虫嫌いだ。アリもダンゴムシもノーセンキュー。
「ほら、行ってらっしゃい」
籠と木簡、巾着を渡された。
「行ってきまーす」
大きなあくびをして家を出る。洋風のドアなんてあるはずもなく、すだれが入り口にかかっているだけだ。
セキュリティ低ッ!泥棒入り放題!こんなものを家とは呼べないだろ!
現代と戦国時代の差にドン引きしながらも、指定されたものを買っていく。
尾張弁とでも言うのだろうか・・・
現代の言葉とあまり変わらないのだけれど、語尾に「~だみゃあ」「~だがや」がついていたり、地方特有の訛りがある。この時代では、京都の言葉が標準語だ。
戦国時代のお金の単位は『文』だ。100文が、現代で言う一万円ぐらい。
お金の使い方は、戦国時代をモチーフにしたテーマパークに行った時に、ゲーム感覚で暗記した。
興味があることは、すぐに記憶できる。
日本史も興味があったから覚えられた。武田信玄、上杉謙信、織田信長・・・織田信長!?
そうだ。ここは尾張。天文21年、1552年ということは、信長は18歳。家督を継いだ後じゃないか。
母さんの「織田信長様が治める豊かな土地」という言葉で、どうして気づかなかったのだろう?
信長は身分、家柄を気にしない。能力があれば問答無用で家臣にしてくれる。それは彼の家臣たちの出自を考えて言えることだ。
なら、俺は?俺も例外ではないはずだ。信長に認めてもらえれば、家臣にしてもらえれば、武士になれる!百姓の身分から抜け出せる!
決めた。俺は織田の家臣になる!
・・・口だけなら簡単なんだよなあ。実際はとても難しい。
まず問題は、どうやって信長に知ってもらうか。いくら能力が高くても、それを知ってもらわなければ意味がない。
そこを含めて家に帰ってから考えよう。
俺の下剋上ライフ、はじまりはじまり~
読んでくださりありがとうございました。