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頼み事を聞いたせい

「それでさ、頼み事ってなんなの?」

夕飯を食べ終わり、食器もそのままに雪に尋ねる。そう、この頼み事の事を私は何にも聞いていない。よく引き受けたな、正常じゃなかった…。

雪は淡々とマニュアルを読むように話し始めた。

「秋から冬、そして、冬。この辺りは人がひときわ強くマイナスな感情が育ちやすいんだ。幸ねーもそうじゃない?で、死にたいって思う程強くなると」

雪はもったいぶって間を開ける。

中々続きを言わない事に焦れったくなり次を急かす。

「強くなると?」

「冬が開けなくなる」

「まさか」

出てきた答えに耳を疑った。そんなファンタジーある訳ない。

内心を見透かしたように雪は真面目くさったトーンで私に言う。

「毎年誰かが、誰を救ってる」

「本当に?」

どうも信じられない。色々と不透明だ。

「それはどういう基準で決まるの?」

「僕が目覚めた時に目の前に居た人。正確には死のうとした人」

「マイナス感情が強いから?でもなら、あの時電車に飛び込んだ人がいるじゃない。あの人は?」

もしかして、雪の目の前にあの人がいたら私と飛び込んだ人は立場が逆だったかもしれない。

「多分、そーぞー通りだよ。運がなかった」

「そんな」

「でもさ、幸ねーあの時何も思わなかったでしょ?」

「そ、それは……」

何も言葉が出てこなかった。その通りだからだ。今初めて薄い繋がりが出来てようやく悲しくなった。

「実を言うとね、幸ねーもまだ強いマイナス感情に囚われてる」

「……そんな私に誰をどう救って言うの?」

「うん。だから、先ずは幸ねーが救われなきゃね」

救われる。私が。でも、何から?

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