死のうとしたせい
あれだけ暑かった夏はいつの間にか過ぎ、今は朝は肌寒いと感じる程だ。気温が下がる度に追い立てられている気分になる。
将来は?就職は?安定とは程遠いグラグラ揺れる危うい立場。
今は学生だ。それも時期に終わる。その時私は?自信をもって、こうしているだろうと言う答えはない。
私には3年後どうなっていますか?みたいな学校の質問が嫌いだ。分かるわけないだろう。1年後も分からないのに。けれど流されるまま私は短大に入っているじゃないか。
季節は変われども日常は変わらない。
誰かが死んでもまた、同じように世界は回るだろう。
私が死んでも世界は止まっちゃくれない。……何考えてんだか、はぁ。
『電車がまいります、黄色い線の内側までおさがり下さい』
駅のホーム、無感情の人々に向けて決まり文句がアナウンスされる。大体はイヤホン付けて音楽聞いてる人ばっかで聞いちゃいない。
嗚呼、これに飛び込めば楽に……何も考えなくても、何かに追い立てられなくても済むんだろうか?
フラフラと力なく前に歩く。あと2歩、1歩。
脳みそが死に対するイメージを麻痺さてるのかどうなのか、行けそうだ。
電車が迫る、あとは前に飛び出すだけ。タイミングを見計らって飛び出した瞬間電車に体当たりするのが理想だ。
死ぬ事は怖い事だと思ってたのになんて事ないな。
そして、飛び込もうとした時後ろから服を捕まれ尻もちを着いた。
「待った、待った!死ぬ前に1つ手伝ってくれない?どうせ死ぬんならいいよね?」
私は戸惑い、目の前に電車が通過した。途端冷や汗が背中に滝のように流れた。ゾッとするゾッとする。私今、死のうとしてた。
振り向けば無邪気な顔を綻ばせる小さな少年が居た。
掌に痛みを感じて見てみれば血のにじむ擦り傷を作っていた。ジンジンと痺れる痛み。こんな怪我いつぶりだろうか。私はまだ生きている。
私の手は震えていた。