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1話
艶やかな深紅の髪をなびかせ、颯爽と歩く姿は誰もが1度は振り返るほどに美しく、
清廉された佇まいに凛と澄んだ空気を身に纏う姿は一見女騎士のようにも見える。
しかし、僅かに頬を染め恥ずかしげに俯く姿は確かに恋する女の姿で……。
彼女と見つめ合う男の琥珀色の瞳もまた、同じ熱を称えていた。
優しげに目元を緩め、そっと彼女の乱れた髪を直しす何気ない動作すら気遣わしに……。
決して私には見せないその姿
互いに叶わないと知っているからこそ、距離を見誤らないように、慎重に……
少しづつ近づく2人のいじらしさに見るものは心を奪われるだろう。
これは2人の物語
そして、私の役はいつも憎まれ役だ。
嫌われ、2人の仲を引き裂く悪役……。
それでも彼の隣に立てるなら喜んで演じられたのに……。
いつかは、私の存在に気づいてくれると、信じて待つことも出来たかもしれない。
それでも、彼の隣にはいつも姉がいて……
それが当然であることのようにそれを誰も否定することは無い。
私がどんなに訴えようと、聞き入れるものはいなかった。
私は形だけですらも、彼の婚約者では居られなかった。