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第二話



 そして、デート当日。先生と連絡を取り合うのはとても緊張したが、彼はとてもお茶目な人で返事も可愛くて笑えた。そんな連絡のおかげで、夢の日を迎えたのだ。

 私は頑張って大人みたいな感じでお洒落をした。ストレートパーマにし、大人っぽい新品の服を着た。カッコいい革靴を履いて、待ち合わせ場所に向かう。

 家に迎えに来てお母さんにバレると不味いので、学校からも少し離れたコンビニの駐車場が待ち合わせ場所となった。

 待ち合わせ場所であるコンビニに着いて、先生の車を探す。意外と似たような車があって、見つけるのが難しい。


「美優、ここだ」


 そんな声が聞こえて振り向いた。そこには、車に凭れる先生が居た。私は急いでそちらに向かった。


「先生、おはようございます」


「おはよう。キレイだね」


「えっ!あっ、ありがとうございます!」


 大好きな人にキレイだと言ってもらえて嬉しかった。お洒落して良かった。

 私は先生の車の助手席に座った。とても緊張して、硬直してしまっていた。先生はそんな私を見て笑った。


「緊張しなくて良いよ。お前のお望み通りのデートなんだからさ」


「はい……」


 先生はそう言って、車を走らせた。運転している先生はとてもカッコ良かった。


「あのさ、俺のことは(じん)で良いよ。敬語無しで」


「えっ、そんな……」


 先生の名前は梨本仁。こんな私が先生の名前を呼んで良いなんてあり得ない。


「だって、デートでしょ?俺達は今日だけ恋人だ」


「うん……」


 そうだ。今日だけは先生の彼女で居られるんだ。だから、私は何でもして良いんだよね。


「因みに、妻から許可取ってるんだよ。美優とデートするって言ったら、会いたいとか言い出したんだぜ。さすがに断ったけど、キスとか何でもして良いってさ」


 先生とキス……。そんな夢みたいな体験だけど、そんなイケない行為も許してくれる奥さんがすごい。


「せっ……仁は大丈夫なの?私とデートなんてして」


「良いに決まってるだろ。いやぁ、チョコもらえるとか思ってなかったなぁ。マジで嬉しいから。なぁ、美優。今日はときめこうぜ」


 仁の言葉に、私は笑った。仁はこんな冗談を言う人なんだと知った。意外と高校生みたいで可愛いと思った。今日はたくさんの仁を知れると思うと嬉しい。

 隣で運転をしてくれる人はいつもの担任の先生じゃない。仁は私の彼氏だ。そう思えるのがすごく嬉しかった。


 一時間くらいすると、遊園地に着いた。まさかの遊園地に、衝撃が走った。


「県外の方が良いと思って、地元の栃木県にしたよ。まぁ、そこまで遠くはないしな」


 ここが仁の地元の栃木県かぁ。すごいなぁ。私の地元とは大違いだ。


「仁。でも、高いよね?」


「大丈夫。ここは大人の意地を見せるから、美優は気にしなくて良いんだよ」


「はい……」


 仁が得意気にそう言ったので、甘えさせてもらおう。だって、今日は仁の彼女なんだから。


「手繋ごうか」


「うん……」


 私は、仁から差し出された手を握った。男らしく温かい手だった。


 しばらく色んなアトラクションで遊んだ。とても楽しい一日だった。


「最後は、観覧車行こうか」


「うん!」


 私は仁と手を繋いで、観覧車に乗った。景色はとても良い。目の前には仁が居て、緊張してしまう。


「あのさ……」


 突然、仁が口を開いた。その顔はとても真剣だった。


「こんな教師の俺でも、一線越えても良いとか思う?」


 この質問が来たということは、すごいことをするのだろう。私は一気に大人の世界に入ってしまうのだろう。それで良いんだ。私は、仁が大好きなんだ。


「はい」


 私の言葉に、仁は目を見開いて驚いていた。


「本当に良いの?」


「だって、私は仁が大好きだから」


 こんな恥ずかしいことを言えたのは、そういうムードだからだろう。


「それは、俺が言いたかったな」


 仁はそう言って私に近付き、唇を重ねた。舌を絡ませる熱い大人にキスに混乱させられながら、私は幸せを感じていた。

 そして、唇が離れた。目の前の彼はとても真剣な表情だった。私はそんな彼に微笑んでみせた。


「仁、ありがとう……」


「美優、好きだよ」


 また軽いキスをして、仁は目の前の席に座った。恥ずかしそうに、片手で顔を覆っていた。それがとても可愛くて、笑えた。


「何笑ってんだよ。もうすぐ、観覧車が終わるな」


「そうだね。最高だったな」


「ああ、そうだな」


 人生で一番幸せだった観覧車。もう忘れられない。キスをしたなんて、本当に夢みたいだ。

 観覧車が一周し、私達はコンテナから出た。そして、仁と手を繋いで歩き出す。


「ディナーでも行くか」


「えっ、ディナー?」


 私は思い出した。夜まで良いか聞いてほしいという連絡があった。それで、私はお母さんに言うと、体は大切にと言われて了承を得たのだ。

 また私は仁の車に乗った。先程の余韻で、まだ顔が熱い。運転をする仁はやっぱりカッコいい。幸せだと私は思った。



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