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蛍は焦げる  作者: 愛璃
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道ずれ

「お前も道ずれだ」


別にわかってることだけど言わなくたっていいじゃないかと笑いながら

山浦と交代で部屋に入っていく築田。


『築田さん……?』


「ごめんね、聞いちゃってた」


正直、半ばわざとだったりするんだけどね、そんな言葉は心に留めておいた。


「奈美ちゃんも大変だね~」


他人事のように築田はそう口にした。

これから彼も奈美を困らせることを言うというのに。

しかし、彼がすぐに口を開くことは無かった。

この後他メンバーが来る予定じゃないことはもう把握しているため、もう少し時間が経ってからにすると決めていたのだ。

それは連続で告白されると奈美の心の負担も大きいだろうからという理由でもあり、何より彼の心もまだ落ち着いていないということが一番の理由だった。




断られることをわかっていて告白する所謂少女漫画に出てくる『当て馬』役はこんな気持ちで告白する時間を過ごしてるのだろうか。

そのようなことを考えるくらいの心の余裕は出来たようだ。




先程から気晴らしにコーヒーを何杯も飲んで。




奈美に熱い視線を送って。




喉まで出てきている言葉を何度も飲み込んで。




やっとのことで、ちょっと休憩しない?と話しかけることが出来た。

今から告白するんだと思うと自分の口から出てくる言葉全てに気を遣ってしまう気がした。


「はい、どうぞ。」


奈美の前に彼が先程から何杯も飲んでいるのと同じコーヒーを差し出す。

これが、今から話す話を聞いて欲しいという彼なりの意思表示だ。


「ここのところ何度もでうんざりだと思うけど聞いて欲しいことがあるんだぁ。」


できる限り柔らかく言ったつもりの築田だったが、聞いて欲しいことがある

という言葉に少し身構える様子の奈美。


「奈美ちゃん、実はね、僕、奈美ちゃんのことが好きなんだ。」


奈美は真剣な眼差しで彼を見つめて、口を開く。


『築田さん、すみません。私には…たぶん好きな人がいます。お気持ちは嬉しいんです、ありがとうございます。』


何を言われるかわかっていたため覚悟は出来ていた。

しかし、やはりいざ言われると辛いものだ。




「やっぱり俺̀じゃダメかあ……笑笑」




築田が思わず声に出してしまったがきっと奈美のことだ、これも届かないのだろう。

木原が羨ましい、改めて彼はそう思った。


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